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2012年1月 月次レポート(新谷崇 イタリア)

月次レポート 2012年1月
新谷崇(博士後期課程)
派遣先:ピサ高等師範学校(イタリア)

 1月前半は冬期休暇中だったため、ピサに留まり、これまで収集した史料を整理、分析し、論文執筆を進めた。後半は、フィレンツェの国立中央図書館に通い、第二次世界大戦後の雑誌を調べた。降雪の影響で電車のダイヤがたびたび乱れたが、計画通りに作業を終えることができた。多くの貴重な史料を手にすることができ、満足のいく調査となった。
 フィレンツェの国立中央図書館はイタリア国内で最大規模の図書館である。今回は館内1階にある定期刊行物の部署で作業をした。唯一不便な点は、史料の多くが郊外の倉庫にあり、取り寄せなければならないことである。配達が週二回で取り置きは三点までという制限があるため、史料の到着に合わせながらの作業となった。
 今回請求したのは、Rassegna Nazionale、Il Coltivatore Diretto、La Patarinaという、ローマで発刊された雑誌である。目的は、ファシズムを支持したカトリック系知識人、ジューリオ・デロッシ・デッラルノ(Giulio De' Rossi Dell'Arno)の戦後の活動を把握することである。博士論文の第一章で、彼の思想と行動を論じる予定である。ファシズム期との継続性に注意しながら史料に目を通し、デロッシ・デッラルノの署名記事を複写した。
 入手した史料を簡単に説明したい。Rassegna Nazionaleは1879年に創刊されたカトリックインテリ層向けの政治・文学雑誌である。デロッシ・デッラルノは1936年に同誌を買収して編集長となり、ファシズム政権(人民文化省)から資金提供を受け、38年以降人種主義プロパガンダをおこなった。1943年6月号までは調査済みで、今回は1950年と1952年の号を入手した。Il Coltivatore Direttoは独立系農業組合の機関紙である。ファシズム期に教区司祭向けの農業雑誌を出していたデロッシ・デッラルノが、戦後も形を変えながら農業関係の運動をしていたことを確認できた。この史料を入手できたのは大きな収穫である。La Patarinaはカトリック系のローマの地方紙である。残念ながらフィレンツェ国立中央図書館は2号しか所蔵しておらず、他の図書館で調べなおす必要がある。閲覧した範囲では、研究に活かせそうなテキストや情報は見つからなかった。
 来月は、今回手に入れた史料をしっかり読み込んでまとめ、その成果を博士論文の第一章に反映させる。加えて、2月6日から始まるイタリア行政史のゼミナールに出席する。博士論文でファシズム体制の農業政策を扱うので、イタリアの行政機構とその形成過程を学ぶのは有益だと考えた。

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