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2012年12月 月次レポート(桑山佳子 スイス)

短期派遣EUROPA月次レポート
2012年12月

博士後期課程 桑山佳子
派遣先:スイス・チューリッヒ大学

 12月は、住居探しと論文に追われた一か月だった。
 まず、タン先生との面談では、先月に引き続きアウトプットに焦点を置いた指導を受けた。先学期は文献を読むことが中心だったが、先月からは読解と議論のあとで文章にまとめることを始めた。博論でも扱う予定の言語魔術について一度小レポートを出したあと、今年出版された多和田葉子のFremde Wasserについての文章を書いた。オリジナル・翻訳を問わず英語で書かれた作品すべてを英文学科で扱うというヨルダンの大学など、Fremde Wasserの「種子島」の章では英文学の定義についての文章がある。今回は、この箇所をもとに多和田の作品を扱うにあたっての「○○文学」という区分の有効性について書いた。今月までは一次文献を中心に読み進めてきたが、この作業はほぼ完了しかけている。来月の面談では、博士論文の全体の構成、テーマの再確認、そして文献リストの提示を行い、今後の研究の進め方について話し合うことになった。
 雑誌論文では多和田葉子の作品、特に『飛魂』と『ボルドーの義兄』にみられる文字の意味からの逸脱について書いている。これまでの成果を極力盛り込もうと試みているのだが、このテーマは報告者の博論の重要な軸のひとつなので議論を急ぎすぎることなく、着実に書き進めていきたい。
 住居探しに関しては、周りの人たちから言われていて覚悟していたものの、極めて難航した。チューリッヒは空き物件が極めて限られており、多くの場合Wohngemeinschaftといわれる共同生活で、はじめにインターネット上で申込み、内覧を兼ねた面接に呼ばれたあと、複数の候補者のなかから選ばれてはじめて物件が決まる。クリスマス休暇に入ると入居者募集の広告もほとんど出なくなり、メールや電話の返事がこなくなった。新しい住居は結局12月中には見つからなかったので、部屋探しは1月に持越しになる。
 クリスマス前には、チューリッヒ大学から入学の申請を認める書類が送られてきた。ひと月以上かかる、とのことだったので少し不安だったが、早めに受け取ることができて安心した。
 来月は、雑誌論文を仕上げ、博士論文の構成等を示すことになる。3月末からの派遣での成果を見直し、時間の使い方なども含めた反省をもとに、これからの足場を固める機会にしたい。

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