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2012年11月 月次レポート(柴田瑞枝 イタリア)

月次レポート  2012年11月

博士後期課程 柴田 瑞枝
派遣先:ボローニャ大学 (イタリア)

 今月は、先月に引き続き、ボローニャ大学における指導教官のマルコ・アントニオ・バッゾッキ先生のイタリア近現代文学の講義に通う傍ら、自らの博士論文執筆のための資料蒐集、読解、テクストの分析などを行いました。特に、博士論文の1章を充てたいと考えている、アルベルト・モラヴィアの小説La vita interiore (邦題『深層生活』)(1978年)についての研究に励みました。この作品は、'68年の異議申し立て運動コンテスタシオンを背景としていますが、当時、モラヴィア自身も学生たちから「ブルジョワ作家」として糾弾されたという事情もあり、作家はこの運動に強い関心を寄せていました。従って、作品をよりよく理解するには、モラヴィアの異議申し立て運動に対する政治的な立場を正確に捉えることが重要であると考えます。これまでの研究では、作家の政治的動向についてあまり深く立ち入ることをしてこなかったので、今回新たな切り口から作品を読み返すことで、作家像に関しても、これまでとは違った分析の視点が拓けるのではないかと期待しています。
 月末には、モラヴィアの生誕日(11月28日)に合わせてローマで催されたシンポジウム、「モラヴィア、パゾリーニ――生涯の友」へ足を運びました。かつてモラヴィアの伴侶であった作家のダーチャ・マライーニや、ジャーナリストのフーリオ・コロンボらが、それぞれ20世紀イタリアを代表する二人の作家/知識人について、個人的な逸話を含めながら談話しており、作家たちの生前の様子が生き生きと想像でき、良い刺激を受けました。マライーニの口から、数は多くないものの、モラヴィアからパゾリーニへ宛てた未刊の書簡が近々発表されることが伝えられ、貴重な研究資料が増えることを嬉しく思っています。イタリアに滞在できる時間を最大限に利用して、このようなシンポジウムには積極的に参加しつつ、年内に小論文を一つ仕上げることが、目下の目標です。

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