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2012年11月 月次レポート(桑山佳子 スイス)

短期派遣EUROPA月次レポート
2012年11月

博士後期課程 桑山佳子
派遣先:スイス・チューリッヒ大学

 11月は、ヒルデスハイム・セミナーを中心に動いた一か月だった。振り返ると反省点が多々浮かんでくるが、事前準備を含め、聴衆としても発表者としても多くを学んだ。
 報告者の発表では、翻訳理論の異化翻訳と多和田のテクストにみられる翻訳の概念とを比較し、実際のテクストからその例を挙げた。日本語とドイツ語が混合して書かれた詩「Die 逃走 des月s」は、6月の発表の際にも取り上げたが、それほど深く扱うことができなかったので、今回はこの詩をきちんと論じることが目標のひとつだった。普段接している中国学、日本学の学生とは漢字を文字として捉えることが習慣となっている。しかしヒルデスハイムでの聴衆は必ずしも漢字に親しんでいるわけではなく、アルファベットと漢字の混ざったこの詩の漢字はそもそも文字には見えない、という指摘があった。この点は思いが及ばなかったところで、今回のセミナーでの収穫のひとつである。
 自分の発表以外でも興味深いものがあったが、発表方法自体も面白いものだった。発表言語が多岐にわたっており、扱われる分野もさまざまで、全員の理解を促すためそれぞれ工夫が凝らされていた。また、自分の研究と直接の関係はないが、外語大の西岡先生の日本の知識人についての指摘は、出発前にチューリッヒ大学で聞いた日本学科のミュラー先生の講演とつながるところがあったように思う。
 セミナーの準備でも、多くを学んだ。出発前には博士課程の学生コロキウムで発表し、現地に到着してから先生方に原稿を見ていただいた。多くの修正に加え、ドイツ語で原稿を書く際のさまざまなヒント、厳密に論じること、ドイツ語それ自体についてなどのご指摘をいただき、限られてはいたが、とても有難い時間だった。
 セミナー以外では、先月から引き続き、入学手続きを行った。大学の事務に通い、その都度替る担当者に日本の大学の仕組みを説明し、自分の主張を通す日々で気疲れすることも多かったが、日本学科のシュタイネック教授から通常の書類に加えて推薦状を書いていただき、先生方や友人たちにも助けていただいて、無事期限内に書類を受理してもらうことができた。大学からの返事が届くのは1か月以上先、とのことで、ひとまずこの手続きは落ち着いた。
 指導教員のタン先生との面談では、今月はセミナーの反省も含め、しばらくアウトプットに力点を置くことになった。テクストを読み、議論することはこれまで通りだが、次回以降はその都度小レポートを準備する。
 12月は、来学期からの住居探しと、論文の執筆、共同学位の手続き等を進める。

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