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2012年1月 月次レポート(カン・ミンギョン ドイツ)

短期派遣EUROPA月次レポート(2012年1月)

カン・ミンギョン(ドイツ・国立ドイツ語研究所)

 今月は派遣最終月でしたが,約10ヶ月間お世話になったマンハイム大学のゲストハウスを出て,民間のアパートに引っ越すことになりました。現在行っている研究を完成させるために,2月には再びマンハイムに戻って3月下旬まで滞在することになったためです。たまたま覗いたインターネットサイトで好条件の中間賃貸の物件を見つけることができたのはラッキーでした。中間賃貸(Zwischenmiete)というのは,借りる側にとっては短期間の契約が可能で基本的な家具などの設備が整っているのが便利ですし,貸す側にとっても住居環境をキープしながら留守の間の家賃を浮かすことができるので,お互いにとって無駄がなく便利な制度と言えます。私は今回,他の町での実習(Praktikum)のためしばらくマンハイムを離れることになった女子大生のアパートを借りることになりました(もちろん元々の貸主の承諾を得て)。日本では一般的に認められる形態ではないですし,可能だとしても,見ず知らずの人に私物の家財道具も含めて部屋を貸すのは違和感がある人も多いと思いますが,こういった賃貸事情にもドイツ的合理主義の一端を見ることができます。

 執筆中の論文については,使役交替動詞の中でも非使役的用法として自動詞表現と再帰表現の両方が可能なタイプ(他自再動詞)のデータを補いつつ記述を見直しました。その中で改めて気になっていることの一つに,理論的な可能性と実際の使用との間の乖離をどのように扱うべきかという問題があります。これは言語研究全般に広く関わる問題と言えますが,現在行っている分析でも,辞書記述やネイティブの語感からすれば可能な表現でもコーパスには見られないあるいは非常に頻度が低いということもあれば,逆に辞書記述にはないがコーパスには少なからず事例が観察される場合もあり,コーパスにおける頻度が何を示しているのか,どのように捉えるべきものなのかが考察の一つのポイントになっています。その際,コーパス上の使用頻度が当該言語現象において有意義な場合と,コーパスの種類などによるたまたまの結果に過ぎない場合があるので,その見極めが肝心と言えます。最近は理論的研究のほうからも頻度をキーワードにした論文がいくつも出ていますし,この点に関しては,今回の論文に限らず,様々な題材で検討していく必要があると考えています。
 また,指導教員のエンゲルベルク先生と面談の時間を持ち,今後の予定も含めて話し合うことができました。そこでは特に「状態変化動詞+対格目的語+方向規定語句」の文型に関して,今までの該当動詞群および事例収集の進捗報告を行い,これらのデータを題材にどのような論の展開が可能かその方向性について助言を頂きました。項構造の拡大,言語使用の創造性に関わる文型パターンで,興味深い事例が集まりつつあるので,引き続き作業に専念したいと思います。

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