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2011年7-8月 月次レポート(説田英香 ドイツ)

7/8月 月次レポート
説田英香
派遣先:ドイツ フライブルク大学
派遣先指導教員:ウルリッヒ・ヘルベルト教授
研究テーマ:1970年代から80年代ドイツ連邦共和国における外国人労働者問題

 8月7日をもって、本派遣が終了となった。8月については期間が短かったため、本レポートは7月と8月分まとめての報告とする。

 7月15日~16日にかけてヘルベルト研究室のワークショップが開催され、そこでは、研究室に所属する博士学生及び研究者の12名による報告が行われた。私は15日に30分の報告の枠を与えられた。従って、7月前半の研究活動はこの報告に向けての準備が中心となった。ヘルベルト教授による博士論文指導は、基本的に個別に設けられた指導時間枠内で行われるため、このワークショップは他の研究者の研究を知るとともに、自分の研究を知ってもらうための数少ない機会である。本研究室に所属し10ヶ月以上経つが、「新入り」である私にとって、このワークショップでの報告はとりわけ重要である。コンセプトの明確化の過程において、方法論的・技術的な問題から、移民自身の視点を取り入れるという観点を、相当程度削り落としてきたが、質疑応答では、その視点をむしろ強調してはどうか、という意見が多く出た。私の博士論文で扱う時代は、70年代後半から80年代初頭であり、考察の中心となる移民グループは、結果的に「帰国促進法」の主な標的となったトルコ出身労働者とその家族となる。この時代設定と考察対象設定に関連し、80年代において徐々にドイツ国内でも認識され始めたクルドの問題、また70年代末から増加傾向にあったトルコからの「難民」に関する問題をどう論文に取り入れるのか、という質問が次に多く寄せられた。クルドと難民の問題は、博士論文のテーマ設定、また文脈の流れを考えると、これらを論文の中で直接論じることは難しいとの見解を私はもっている。とはいえ、80年代においては、これらは重要な問題であるため、背景として組み込むことを現在検討中である。他の報告者による報告では、テーマ設定や方法論の他に、文書史料の収集・利用の仕方等の技術面においても非常に参考になるものが多かった。この二日間のワークショップは非常に有意義であったとともに、博士論文執筆準備過程において一つの区切りともなった。本報告をもって、派遣開始から取り組んできた研究のコンセプト設定の段階がようやく終了した。
 私の本派遣は8月7日をもって終了となるが、今後も引き続きフライブルク大学での研究活動を継続することとなっている。8月に行われたヘルベルト教授との面談では、今後の研究計画について指導を受けた。これまでの文献調査では70年代・80年代のドイツにおける外国人労働者の統合政策とその実態を全体史的に取り扱ってきたが、この先10月半ばまでは、83年の帰国促進法に的を絞った文献調査を行う計画である。10月以降は、文書史料館での調査を開始する予定である。現在、調査を行う文書館として候補に挙がっているのが、コブレンツの連邦文書館である。帰国中の8月から9月半ばまでは、この10月から開始する派遣留学に向けての準備を日本で行うとともに、留学中に行えなかった邦語研究の調査を行う計画である。

以上

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