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2011年4月 月次レポート(カン・ミンギョン ドイツ)

短期派遣EUROPA月次レポート(2011年4月)

                                      カン・ミンギョン(ドイツ・国立ドイツ語研究所)

 派遣2ヵ月目に入り,こちらでの生活にもだいぶ慣れ,気持的にもゆとりが出てきたように思います。先日の週末には,マンハイム音楽大学の日本人留学生たちによる,東日本大震災のためのチャリティーコンサートに出かけてみたり,宿舎であるゲストハウスの企画で,皆さんと一緒にBalletabend(バレーの夕べ:モダンダンス)に出かける機会もありました。Nationaltheaterが歩いて行ける近い距離にあり,チケット料金も安く,気軽に多様な芸術文化に触れられる環境は嬉しいものです。
 さて今月は,これまでの研究で扱ってきたテーマの一つである,状態変化動詞における使役起動交替現象(causative-inchoative alternation)について,手元にあるデータを見直し,分析手順を再検討する作業が中心となりました。その理由は,これまではコーパスを用いた使役交替現象の言語使用上の実態調査に重点を置き,一定の結果を得ることはできたものの,その結果に基づく考察において物足りない部分があったからです。Engelberg先生との面談の際にも,このテーマについて話し合うことができ,考察の手がかりになりうる観点や,調査結果の提示の仕方などについていくつかのコメントを頂くことができました。これらを参考にしつつ,現在草稿の作成に取り組んでいます。コーパスデータについては,すでに分析済みのものを持っているわけですが,場合によっては別なやり方での再検証を試みることも考えています。その一つとして,IDSのコロケーション分析ツールであるCCDBの活用も検討してみる予定です。
 関連テーマの文献調査も行いました。たとえばSchäfer (2008)は,使役交替に関わる再帰表現と自動詞表現の意味的相違を問題提起としている数少ない文献のなかの一つで,そこでは,再帰代名詞sichを伴う起動的表現とsichを伴わない起動的表現における自由3格の意味解釈の相違に着目し,統語論的アプローチで分析を展開しています。以前にも部分的には目を通している本でしたが,今回全体を読み直してみて大変参考になりました。
 なお,先日は研究所の図書館の方から,Datenbankschulung(データバンク講習会)ということで,図書館で利用可能な様々なサービスに関する説明を受けました。E-booksやOnline雑誌,文献調査に役立つサイト,各自の研究・論文執筆に役立つ参考文献管理ソフトなど,有益な情報をたくさん教えていただきましたので,今後活用していけたらと思います。
 そのほかには,今年の8月にミュンヘン大学で開催予定の「日独言語学のサマープログラム(Sommerprogramm Deutsch-Japanisch Linguistik)」に参加するための手続きを済ませ,その事前準備として文献調査を始めました。モダリティやダイクシスなど,これまであまり触れてこなかったテーマが扱われる予定なので,基本文献には出来る限り目を通し,準備をしておきたいと思います。

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