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2011年3月 月次レポート(藤井欣子 オーストリア)

月次レポート 2011年3月 
藤井欣子 
派遣先:オーストリア、グラーツ大学

 3月1日からスタートした春学期ですが、第一週はカーニバルの季節でもあり、授業が本格始動したのは第二週からでした。コンラート教授の論文執筆者ゼミは9日に始まり、私は今学期も参加しました。11月の予定では、帰国前に客員研究者として同ゼミで再び報告するはずでしたが、今期は受講希望者が定員を大幅に上回り学生の報告だけでゼミの日程が埋まってしまったため、教授との個人的な面談をもって報告に替えることになりました。帰国1週間前に行われた面談の際には、シュタイアーマルクの農村地域における自由主義について、コンラート教授のご意見をいただくことができました。帰国してからも引き続き、研究の進捗状況をメールでお知らせすることになっています。
  3月はいよいよ私の滞在の最終月となりましたが、今月は文書館での史料分析と平行して先月から課題としていた新聞の収集をシュタイアーマルク州立図書館にて行いました。対象としたのは、官報の日刊グラーツ新聞(Grazer Zeitung)と、下シュタイアーマルクの中心的都市マールブルク/マリボルで日・水・金曜日に発行されていたドイツ国民主義的な主張のマールブルク新聞(MarburgerZeitung)です。これらはマイクロフィルムとして保存されたものを閲覧・コピーしました。マールブルク周辺地域農民協会が活動していた1884年から89年にかけての時期を中心に収集したので、これから分析を進めていきたいと考えています。
 文書館では、不当な土地の転売に関する知事本部からの問い合わせと、それに対する各市町村長の回答および報告書を読み進めました。馴染みのない地名や人名などが頻出しましたが、これらを読む際に文書館職員オルザッハーさんと郷土史家グロースハウプト博士に大変お世話になりました。とくにグロースハウプト博士には、不明な箇所の解読を助けていただいた上、お宅を訪問してお話を伺ったりご家族と一緒にグラーツ近郊の史跡を訪ねたりと様々な体験をさせていただきました。この他、毎日のように文書館に通っていたおかげで「旧筆記体の史料と悪戦苦闘するめずらしい日本人」として多くの人に声をかけられ、知り合いを増やすことができました。11日に日本で大震災が起こった後は、本当にたくさんの人々によって精神的に支えられた気がします。
 多くの史料に加えてこのような人的な繋がりをも得られたことは、5ヶ月間にわたって研究滞在を続けたことの大きな成果であると考えています。帰国後はこれらのリソースを博士論文執筆に最大限に生かしていく所存です。末筆ながら、この得難く貴重な機会を与えてくださった短期派遣EUROPAのご支援に心より感謝申し上げます。

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