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2011年12月 月次レポート(新谷崇 イタリア)

短期派遣EUROPA月次レポート 2011年12月
新谷崇(博士後期課程)
派遣先:ピサ高等師範学校(イタリア)

 12月1日から若手研究者等海外派遣プログラム(短期派遣EUROPA)による研究生活を開始した。滞在地として選んだピサには2008年10月から住んでいるため、生活面での不安はなかった。ピサは小さい町で治安もよく、町の規模に比して大学や図書館が数多くあるため、落ち着いて研究ができている。
 派遣先であるピサ高等師範学校(La Scuola Normale Superiore di Pisa)は、19世紀初頭に開設され、文献学や物理、数学などで知られ、これまで3人のノーベル賞受賞者を輩出している。入学に際し選抜試験を課す少人数の学校であるため、図書館をはじめとする施設で不自由な思いをすることはない。また、付設されている学食では毎日三食用意されており、勉強だけに集中できる環境になっている。
 受け入れの指導教員は、現在学部長でもある、ダニエーレ・メノッツィ教授(Daniele Menozzi)である。メノッツィ先生は、近現代のカトリック史研究の分野で世界的にも第一人者である。定期的に面談をしてもらい、研究の方向性や資料で不明な点を聞くなどして、指導を受けている。
 現在は、メノッツィ先生が担当する現代史のゼミナールに出席している。週2回2時間ずつおこなわれ、学部1年生から博士課程までの学生が一緒に出席する。今年度のゼミのテーマは、カトリック教会の典礼とユダヤ人差別の歴史的考察である。前期は授業で、後期はゼミ生の発表になっている。毎回テーマに応じた資料が配られ、解説され、質疑と討論がおこなわれる。こうした議論に参加することは研究者として成長するためのいい訓練の場であると思っている。また、日本とは違う議論のやり取りを見ることができるのも興味深い。ゼミでは多くの人と知り合うことができ、研究動向などの情報交換をする場としても有意義で、とても満足している。
 今回の派遣プログラムを申請する目的として、博士論文の執筆と、そのための主にフィレンツェとローマでの資料収集を挙げた。今月は、後半が冬期休暇に入ったこともあり、残念ながら資料の収集はほとんどできなかった。図書館や文書館などが軒並み休暇に入ったからである。さらに、昨今の経済危機の影響で、ストライキが半ば常態化し、公的機関の開館時間の短縮、鉄道の不規則ダイヤもあって、思ったようには行動できなかった。
 今月行ったのはピサでの資料調査のみとなった。斜塔の間近にあるピサ大司教館の文書館に通い、19世紀のピサ大司教区内の洗礼簿を閲覧した。博士論文で扱うピサ出身の人物の生年月日や家族構成などを確認するためである。また、ピサ市の戸籍係に同じ人物の戸籍記録の閲覧申請をおこない、現在回答待ちである。
 一方の論文の進捗具合としては、第1章が半分程度書きあがった段階にある。3月には第1章を書き終えるという計画で作業を進めている。論文執筆に関しては、着実に進めていくほかないので、資料の分析が終わった箇所から随時まとめていこうと思っている。
 以上のように、今月は冬期休暇もあって、博士論文執筆とそのための勉強を淡々とこなした。来月も前半は冬期休暇中なので、同様の計画で研究を進める予定である。

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