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2011年12月 月次レポート(村松恭平 スイス)

 月次レポート(12月) 村松恭平

2010年8月にジュネーヴ滞在を開始して以来、5カ月が過ぎた。12月に入ると更に気温が更にぐっと下がり、午後5時を過ぎるとあっという間に外は真っ暗となる。気分転換の散歩で旧市街を訪れると、クリスマス用の装飾やイルミネーションが、大聖堂を中心にあちらこちらの店で静かに輝いており、日本の商業化されたクリスマスとは違う雰囲気を感じることができる。
 12月は、先月作成した参考文献表で纏めた文献の収集と、論文の執筆を中心に行った。文献の収集では、特に戦後の欧州統合の歴史に関連したもの(例えば、Ernst B. Haas, The Uniting of Europe, 1958)や地域経済統合に関連したもの(例えば、Jan Tinbergen, International Economic Integration, 1954)、他に同様の分野での仏語文献も含め、十冊程の文献の収集とコピーをまとめて行った。ジュネーヴ大学図書館に所蔵されていない文献は、トラムに乗って20分程で行くことができるGraduate Institute for International and Development Studies (IHEID)の図書館から簡単に借りることができる。今後、必要に応じてこちらも活用していく予定である。
 論文の執筆については、以前Jovanovic教授に確認した研究計画に基づき、論文の全体的な方向性(章ごとの結論と、そこまでに至る論旨の流れ)をこれまでよりも詳細に考えていった。
本論文は欧州における経済統合過程の中でも、関税同盟に関する政治・経済思想に着目した歴史研究である。戦後の西欧では統合を目指す政治運動が活発化され、1952年には欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)のような一部の産業分野における経済統合が実現したが、この間には更なる経済統合の発展を目指した議論が活発に行われていた。単一市場や貨幣の統一も、実現こそ先になるものの、構想について具体的な議論が始まったのはこの戦争終結から間もない時期だったのである。今回のリサーチでは、これら政治運動の流れと背景の他に、関税同盟形成に影響した当時の具体的な経済思想や、それらに関連した概念(市場規模の拡大の必要性や競争の促進、差別・非差別主義、米国経済モデル等)に注目した。更に関税同盟に関しては1947年頃に欧州関税同盟研究グループ(ECUSG)が発足し、戦後の具体的な同盟形成のプロセスや影響に言及していることが分かったので、今後そういった議論に関する資料を調査しながら更に掘り下げていく。
 新年を迎えると共に気持ちを新たに、この地で研究できるチャンスを生かし様々なことを吸収していきたい。

 

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※写真は、クリスマスの旧市街の様子

 

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