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2011年12月 月次レポート(カン・ミンギョン ドイツ)

短期派遣EUROPA月次レポート(2011年12月)

カン・ミンギョン(ドイツ・国立ドイツ語研究所)

 今月は珍しく風邪を引いてしまい,特に咳がひどかったため,数日間は研究所にも行けず,少々時間のロスがありました。最初は薬局の薬だけで様子をみていたのですが良くならず,結局医者にかかり,処方された薬が無くなる頃になってようやく咳も治まり,普段どおりの生活に戻ることができました。健康管理も仕事のうちという当たり前のことを改めて痛感した1週間でした。
 その一方で12月はドイツ特有のクリスマスを味わえた月でもありました。クリスマスマーケットは,写真などではもちろん知っていましたが,実際に見るのは初めてだったので良い文化体験となりました。マンハイムでは市中心部のショッピングエリアの広場(Kapuzinerplanken)と町のシンボルである給水塔(Wasserturm)付近の2ケ所で開催されていました。寒い中クリスマスマーケットで飲むグリューワインはやはり格別に美味しく,「冬の暖かさ」を気づかせてくれる一品と言えます。研究所でも12月中旬にクリスマスパーティーが開かれました。パーティーが通常の勤務時間内に開かれたのが私としては意外でしたが,研究所所長をはじめ多くの職員やゲストが一堂に集まり親ぼくを深める機会でもあり,日本における忘年会の機能も兼ねているような印象を受けました。ドイツの年末年始は特に連休はないのですが(クリスマスの12月25日と26日は祝日),クリスマス前から年明けまでまとめて休暇を取る人が多く(一般的に年間5週間程度の有給休暇がある),このような年末のイベントは11月下旬から12月中旬にかけて開かれることが多いようでした。図書館で一緒だった仲間たちも,クリスマスパーティーの前後から徐々に帰国し,12月後半は図書館もほぼ空っぽの状態でした。そんななか,知り合いのドイツ人家族に声をかけてもらい,一般家庭のクリスマスの過ごし方を体験する機会に恵まれたのは大変ありがたいことでした。
 研究に関しては,引き続き論文の修正を行いました。具体的には,状態変化動詞の規定に関する理論的部分の補足と,使役交替が制限される動詞(使役的用法のみの動詞と非使役的用法のみの動詞)の分析に重点的に手を加えました。ポイントは,まず使役的用法のみの動詞に関して,非使役的用法が制限される要因が動詞の語彙的意味特性として説明できる場合(動作主志向の意味的要因が特定されているなど)とそうでない場合を区別し,問題になる後者に関して,どのような事例があり,どのような説明が考えられるか提示することですが,ここで,意味論的な問題(semantisch)と現実世界のありように関わる問題(enzyklopädisch)の区別も関わってきます(Habel 1985; Engelberg 2000)。次に非使役的用法のみの動詞に関しても,使役的用法が制限される要因が意味的に説明できる場合(自然現象的事柄を表わすなど)とそうでない場合を区別し,後者に関する議論を補いました。また,典型例に基づく仮説からすれば非使役的用法が制限されるタイプに当てはまるが,実際の使用としては非使役的用法も認められ,使役交替動詞として分類される動詞群(abnutzenタイプ)と,逆に意味的内容からすれば使役的用法が制限されてもよいはずだが,実際の使用としては原因主語の使役的用法が認められ,使役交替動詞として分類される動詞群など,理論的研究ではあまり取り上げられない周辺的な事例にも注目しています。原因主語の使役的用法のメカニズムを含め,いくつかまだはっきりしない部分がありますが,引き続き改善していきたいと思います。

Kang12-1.JPGマンハイム市中心部Kapuzinerplankenのクリスマスマーケット
 

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