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2011年10月 月次レポート(フィオレッティ・アンドレア イタリア)

月例レポート
(2011年10月、博士後期課程 フィオレッティ・アンドレア)(派遣先:ローマ大学、イタリア)

 10月1日予定通りローマに到着し、"ラ・サピエンツァ"大学博士課程(「アジア・アフリカの社会・文化・文明」コース)との共同学位協定に基づくイタリアでの研究を開始した。生活面では、出入国や日伊での滞在許可などの手続きに悩まされることもなく、また住居も日本留学前と同じアパートに運よく住むことができ、スムーズに研究生活に入ることができた。これも若手研究者派遣プログラム(短期派遣EUROPA)の支援のおかげであり、家賃が高騰するローマで静かに勉強に打ち込める環境を確保できたことは、これから研究を安定的に進めるうえで何よりも大きな助けとなる。家賃、光熱費、食費の出費が大きいローマでの生活ではあるが、この1年間は予算を有効に活用し、必要な文献を入手するだけでなく、学会や講演、図書館や資料館での調査研究にも積極的に足を運ぶつもりである。
 私の博士論文のテーマは、日本とイタリアの近代小説における語りの方法の比較研究である。イタリアで過ごす派遣期間中は、特に西洋文学の側に集中し、日本で入手できない資料を手に入れ、研究に反映させることを目指す。一方で、私の研究の出発点は明治初期の小説の語りの方法にあるので、この側面も併せて進めたい。これに関しては、共同指導教員になるマティルデ・マストランジェロ先生の指導を受けることになる。
 今月は、マストランジェロ先生に相談し、毎週水曜日に行われる修士課程の日本文学コースに通うことを決めた。授業のテーマは落語、講談などの話芸で、映像や音声などの資料を用いて話芸が紹介される。また、授業では林家しん平の『落語物語』(角川書店、2011年)の講読、翻訳作業にも取り組んでいる。
 この分野は私の研究計画とは直接的な関連はないものの、話芸が日本近代文学の誕生や展開に及ぼした影響も考慮して、このテーマを深める必要があると判断した。日本では、落語などを見る機会はあったが、これまでこの芸術表現を詳細に分析することはなかったので、大いに参考になっている。
 マストランジェロ先生は以前から日本文化・文学の専門家として高い評価を得、森鴎外の研究者と翻訳者として知られており、近年は落語のような話芸に取り組んでいる。マストランジェロ先生からの指導は、自分の研究を展開させるうえで不可欠なものとなろう。
 最後に、10月19日ナポリ東洋大学で本学の和田忠彦先生が行った講演について言及し、今月の研究報告を終えたい。講演テーマはリービ・ヒデオの人物像と作品だった。アメリカ出身で、特に日本で活躍し、日本語で自分の主な作品を執筆したリービ・ヒデオは、私の研究で中心的な位置を占める翻訳理論の分野においても興味深い作家である。イタリアではほとんど知られていないこの作家に対する聴衆の反応を聞く事もでき、 非常に有意義な経験となった。

 

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