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2010年12月 月次レポート(藤井欣子 オーストリア)

短期派遣EUROPA月次レポート(12月)
藤井欣子
派遣先:グラーツ大学現代史研究所
受け入れ責任者:Helmut Konrad教授

 現在、私は主にシュタイアーマルク州立文書館において史料収集を行っています。この文書館を利用するにはまず、Beratung(相談所)へ行って、ドクターの肩書きを持つ専門の司書に自分のテーマを説明し、どのような史料が必要なのかを相談しなくてはなりません。ここで史料の当たりをつけて、書庫から出してもらうまでには少し時間もかかります。通常1時間ほど待たされた後、ようやく閲覧室にて史料を閲覧することが許可されます。ただし、この閲覧室に持って入っていいのは「鉛筆かPCのみ」です。東欧など他の国では、よくデジタルカメラで史料を撮影できるという話をききますが、ここでは欲しい史料はすべて手で書き写すか、またはコピーかスキャンをお願いすることになります。私は今のところ手書きの史料を書き写しながら読み進めていますが、最終的にはまとめてコピーをお願いしようと考えています。
 私が扱っている史料は"Statthalterei"というシュタイアーマルク州知事が保管していた文書のファイルのようなものです。その中でも、最初は「マールブルク周辺地域農民協会」に関する史料を探して貰ったのですが、この名称では協会登記台帳に載っておらず、1873 年に設立された「シュピールフェルト農民協会」という分類になっていることが判明しました。同協会が1884年に改名して「マールブルク周辺地域農民協会」となったため、改名の経緯や改訂された規約なども同ファイルに納められています。その他、同協会に関する郡の役所から州知事への報告書、州知事から郡の役所への通達、協会が直接提出した規約、州知事とウィーンの官庁の間のやりとり、などが時系列順にファイルされていました。ただ、さきにも少し述べましたが全てが手書きで、しかもKurrentschrift(ドイツ文字の筆記体)という見慣れない字体で書かれています。このKurrentschriftは、戦間期までは学校で教えられていたそうなので現在85歳以上くらいの方は読めるが、習っていない世代にとってはやはり難しいとのことです。この字体に加えて、オーストリア独特の官庁用語や方言、短縮形(BezirkshauptmannをBhptmannと省略)などが随所に現れており、また書き手によって筆跡がまちまちで、非常に読みづらい史料です。そのため、そんなに厚いわけでもないファイルをなかなか読み切れないのですが、司書さんと相談しながらじっくり読み進めています。これまで、解散の経緯についての詳しいプロトコルや、協会の世話役たちに配布された行動指針のパンフレットなど、貴重なものを発見することができました。
 来月からは、こういった原史料に加え、新聞などを使って事実関係に厚みを持たせられるよう展開させていきたいと考えています。

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