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2010年11月 月次レポート(藤野りつこ フランス)

短期派遣EUROPA月次レポート(2010年11月)

パリ第三大学通訳翻訳高等学院(ESIT)留学
藤野りつこ

渡仏2ヶ月を経て、パリでの生活もようやく落ち着いてきましたが、毎日があっという間で、まさに光陰矢のごとしです。
パリでは、11月中旬頃から急激に冷え込み、12月に入る直前に、珍しく雪が見られました。

11月も、盛り沢山な1ヶ月でした。 

<11月5日:ESITのオープンキャンパス>
午前中は、フランス語から英語、そして英語からフランス語への逐次通訳と同時通訳のモデル授業を見学しました。
また、午後からは、学長や各研究科長によるESITの紹介に続いて、座談会が行われました。この座談会には、ESITの卒業生も多く勤める、欧州議会や欧州委員会、欧州評議会、国際連合、経済協力開発機構といった国際機関の通翻訳者採用担当者や、ARTE(Association Relative à la Télévision Européenne-ドイツ語とフランス語で放送される独仏共同出資のテレビ局)の通訳部門の責任者、そして、フランスの大手医薬品メーカーであるSanofi-aventis社の翻訳部門責任者も出席し、通訳・翻訳者という職業や、彼らに求められるもの、現在の通訳・翻訳市場、そして通訳者や翻訳者の、社会における役割等についても議論が行われました。私の修士修了研究は外交通訳をテーマとしていますが、まさに外交の舞台である国際機関における通訳の現状にも触れることができたので、非常に興味深いものでした。
さらに、この午後の部については、仏日英の言語コンビネーションを持つクラスメートが同時通訳を行いましたが、そのブースに入れてもらいました。実際の現場に近い雰囲気や緊張感を感じ取ることができ、また、クラスメートのパフォーマンスから学ぶことも多く、充実した一日でした。

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         パリ第三大学通訳翻訳高等学院入口             同時通訳ブースから

<11月20日:"Déverbalisation" に関するシンポジウム>
20日には、在学生を対象に、ESITにおける通訳訓練のベースとなっている、 "Déverbalisation" (通訳プロセスにおける「非言語化」)についてのシンポジウムが行われました。ESITにおける通訳教育は、この学校の初代学長も務めたDanica Seleskovitch(ダニッツァ・セレスコビッチ)氏が確立した「TIT通訳理論」(Théorie interprétative de la traduction、またはThéorie du sens「意味の理論」)に基づいています。ごく簡単に言ってしまうと、通訳・翻訳行為とは、単なる言葉の置き換えではなく、原発言者の発言を理解し、それを、自然で適切なスタイルを使って、原発言者とは異なる言語で表現することだという発想が大前提となっています。原発言の言語表現を、言語分析ではなく、解釈に基づいて、目標言語に言語化するということです。
当日のシンポジウムは、この理論の確立にSeleskovitch氏とともに大きく貢献した、前ESIT学長のMarianne Lederer(マリアンヌ・レデレール)氏や、視点は違えど、通訳翻訳理論の分野において著名なDaniel Gile(ダニエル・ジル)氏などが出席され、活発な議論とともに進行しました。このシンポジウムから、いかにESITが、通訳教育を行う際に、この理論に重きを置いているかがよく伝わってきました。

<11月26日:日仏製薬協会会議>
現役の会議通訳者でもいらっしゃる、仏日逐次・同時通訳演習の先生の特別なお計らいで、日仏製薬協会会議の同時通訳を聴講させていただきました。製薬分野だけではなく、日本の税制やフランスの社会保障システム等に関する背景知識も必要であり、通訳には幅広い知識が必要とされることを改めて認識しました。また、会議場の後方に設置された簡易通訳ブースの様子や、通訳のパートナーとの交代のタイミングといった点についても、実際に、臨場感あふれる現場でプロフェッショナルの同時通訳者の方々のパフォーマンスを聞くことを通じて、より具体的にイメージすることができました。さらに、休憩時間には、通訳チームのうちのお一人に、通訳者としてのキャリア等々、具体的に個人的な経験についてお伺いでき、参考になる点が多くありました。

          Fujino11-3.JPG  当日の通訳機器

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