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2012年8月 月次レポート(牧野波 韓国)

ITP-AA 月次報告 2012年8月分

博士後期課程   牧野 波

 8月のソウルは50年ぶりの猛暑で、室内が逆に冷房の効き過ぎで寒いくらいでした。2011年東日本大震災以降東京でも節電が当たり前になっていたため、どこに行っても冷房の設定温度が23-25度というソウルの状況には驚かされました。たとえば朝鮮半島の東側の海岸に林立している原発の一基でも事故を起こせば西日本全域に放射能汚染が及ぶ距離の隣国であるのに、東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故の問題は、国境を一つ跨いだだけで「他人事」で有りうるのだな、という思いがふとよぎりました。

 派遣先の韓国外国語大学では哲学科のキム・ウォンミョン先生に指導教員を担当して頂いています。来て早々にお会いする機会を持ち、韓国における大学制度の現況や資料の探し方のコツなどをうかがいました。
 さて8月の活動は、前半は韓国外国語大学での生活準備、後半は現地踏査と読書会などの参加に追われました。

1) 国立顕忠院現地踏査
 ソウルを横断する漢江の南にある国立顕忠院(軍人・兵士をはじめ「国のため」に亡くなった人々のための国立墓地)に、調査・資料撮影のため数度足を運びました。国立顕忠院は朝鮮戦争直後から設立が始まった国立墓地であるとともに、韓国の歴代の大統領が安葬されている墓地でもあります。最近では12月に大統領選を控え、候補者が次々に参拝に訪れたことでも話題に上りました。久しぶりに歩いてみて改めて、冷戦によって一民族が二つに分断された国家における「国立墓地」とは何なのかという問いについて考えさせられました。踏査の内容は2013年1月のCAASシンポジウムで発表する予定です。

2) 読書会への参加
 研究を行っていく上での韓国語能力涵養のため、延世大学の金哲先生が主催なさっている読書会に、週一回参加させて頂くことになりました(以前外大に外国人研究者としていらっしゃっていた李慧真先生のご紹介で)。現在は明治期に発行された『朝鮮』という雑誌(日本語で書かれたもの)をその場で韓国語に翻訳し、内容を参加者で共有していくという作業をしています。近代初頭の日本語を韓国語に翻訳する際の古めかしい言い回しなどを実地で学ぶ良い機会になっています。

 そのほか、研究上かかわりのある先生にお話をうかがったり、論文・書籍などの二次資料を収集し、目を通す機会に恵まれました。

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