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2012年2月 月次レポート(武沼慧 イギリス)

ITP月次報告(2012年2月)

地域国際専攻地域研究コース
                         博士前期課程1年
                            武沼慧
                         派遣地:ロンドン

 2月4日にロンドンに到着し、2か月の研究活動をスタートさせた。到着日は非常に寒く雪が降っており、次の日の朝は珍しく真っ白なロンドンを見ることができた。
 今回の活動拠点の一つであるロンドン大学東洋アフリカ研究学院(以下、SOAS)には学部在学時にも交換留学生として在籍していたが、当時行っていた図書館の改修工事が昨年終了してグランドフロアが新しくなっていた以外に、とくに大きな変化はなく、相変わらず活発な学生でにぎわうキャンパスであった。
 今回のロンドンへの派遣の目的は、英国図書館 British Library(以下、BL)とSOASにおける資料調査および研究である。修士論文では、旧インド省の資料India Office Records(以下、IOR)のほか、ヒンディー語およびウルドゥー語のトラクトを一次資料として用いるため、これらを所蔵しているBLでの資料の実態調査を中心的に行う。
 初月の活動内容としては、SOASの図書館で関連論文や研究書を読むことに前半の多くの時間を費やした。本研究にかかわる、コミュナリズム問題の歴史的経緯や、19世紀後半~20世紀初頭のヒンドゥー教諸団体による宗教社会改革運動などを、外語大が所蔵していない研究書などを確認しながら、今一度整理し資料調査に備えた。SOASの図書館の蔵書の充実度や、OPACで検索できる量も非常に多いことなどに関しては、過去にSOASに派遣された方々が説明しているとおりである。とくに南アジア関連の蔵書は、図書館の最上階であるフロアA全体を占める規模であり、研究にとってとても良好な環境であることを改めて実感した。
 BLでは、資料データベースの作成に着手した。BLのAsian & African Studiesのリーディング・ルームでは、IORの目録や、旧インド省図書館India Office Library(以下、IOL)・大英博物館British Museum(以下、BM)のコレクションであったヒンディー語出版物の目録など、必要な資料の目録が冊子体とウェブによって確認できる。特に、日本でウェブから検索できなかったものを冊子体の目録を使って確認し、データベースを作成する作業を行っている。2月は、IORの中でProceedingsとよばれる、植民地期にインドからイギリス本土に送られた主要な政府文書のコピーの資料群のうち、Home とPoliticalという項目で分類されているものの確認作業にとりかかった。部局組織や資料構造、分類などが複雑でいまだに理解しきれない点があり、手探りでの作業となっているが、いくつか重要な資料も見つけることができた。
 さらに、すでに日本で目録確認済みのウルドゥー語のトラクトのうち、研究に関連する20世紀初頭から1920年代後半までの時期のControversial Literatureをコピーして入手した。3月は、まだ主題ごとの目録が整備されていないヒンディー語のトラクトについて、上述のIOLやBMの目録を確認しながら研究に関連するものの目録を作成する。なお、BLでは、見開きで左右の各ページに23ペンスと割高なコピー代を支払わなければいけない。デジタルカメラの持ち込みは禁止されている。
 加えて、2月18日におこなわれたSOASでのシンポジウムMaking a Difference - Representing  Constructing the Other in Asian / African Media, Cinema and Languages に参加し、ITPプログラムで派遣された先輩方の報告を聞かせていただいた。プレゼンテーションのテクニックなどは参考にさせていただき、また、興味深い歴史史料の分析や現地調査の報告からは、ITPの海外派遣プログラムの意義を強く感じた。
 最後に、SOASで指導をしてくださることになっている、Peter Robb氏となかなか連絡がつかず、先日やっとアポイントメントをとることができた。3月の上旬に一度挨拶にうかがったのちに、リサーチセミナーに参加させていただく予定である。こちらに到着してすぐにお会いしたかったのだが、3月には、Robb氏をはじめとするこちらの研究者や学生の方々と活発な交流を行い、今後の研究に役立てたい。
 上述のように、研究の環境は非常に良いので、このような機会をいただけたことに感謝しつつ、滞在の残り半分である3月は、さらに充実した成果を出せるように精進したい。

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