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2012年2月 月次レポート(牧野波 韓国)

ITP-AA 派遣月次報告 2012年2月分

博士後期課程   牧野 波(派遣先:韓国外国語大学)

 派遣5ヶ月目にあたる二月は、これまで行ってきたラングウィッジ・エクスチェンジを終了しました。翻訳を行いながら参考文献講読に力を注ぎつつ、また月末には他大学の先生方の調査旅行に同道し、多くの刺激を受けました。

1)3月の発表準備
 先月の報告でお伝えしたように、韓国外大でお世話になっている李慧眞先生から、3月に国際語文学会で現在の研究内容について発表する機会を頂きました。
 派遣者の研究対象である、独立紀念館(全斗煥大統領期に設立提起・推進、1987年開館)、戦争紀念館(盧泰愚大統領期に設立提起・推進、1994年開館)、両記念館の展示における歴史叙述は、度重なる外国からの侵略をその都度克服してきたという「国難克服」史観が基盤となっています。この歴史観は1970年代の朴正煕政権期に、非常に体系的に打ち立てられ、また大々的に宣伝されたものです。
 3月の発表では、この「国難克服史観」に依拠した政策立案を行った、文化公報部(現・文化体育観光部)について、組織の変遷と実際に施行された政策の概要を整理し、文化公報部が担った役割を論じることを考えており、そのための資料収集と文献講読を継続しました。

2)釜山―巨済島―巨文島 研究調査旅行同行
 アーキビストである学習院大学の安藤正人先生と、法政大学の金慶南先生のご厚意で、釜山から巨済島、巨文島を回る調査旅行に同行させて頂きました。巨済島では植民地期の日本人居住街から日本式家屋を発見・(突撃で)訪問したり、巨文島では地域の歴史をまとめている元・副里面長さんとともに、植民地期に愛媛から日本人が移住してきた痕跡を求めて調査を行い、また植民地期に下関で生まれ終戦とともに巨文島に帰って来られた方にインタビューを行うなどのお手伝いに関わらせて頂きました。
 地域の人々すら既によくわからない、消えゆきつつある歴史の痕跡を、様々な情報から跡づけ、当時のビジョンを少しずつ立ち上げていく歴史学の現場に生で立ち会えたことは、今後の大きな財産になったように思います。

3)曺喜昖先生の著書『動員された近代化』の翻訳
 12月から引き続き、朴正煕政権時代の政治―社会構造を分析した曺喜昖先生の著書『動員された近代化』を翻訳しています。3月の発表の内容も朴正煕政権時代の文化政策を扱ったものであり、政策背景となる当時の社会状況をどのように分析するのかという点でも、翻訳を行いながら多くを学んでいます。

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