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2012年1月 月次レポート(牧野波 韓国)

ITP-AA 派遣月次報告 2012年1月分

博士後期課程   牧野 波(派遣先:韓国外国語大学)

 1月に入り、ソウルは最低気温が-10℃を下回る日が出るようになってきました。あまりの寒さで肌が露出した部分が痛くなるほどです。1月は翻訳を進めるのにかなり時間を取りましたが、3月の発表など新しいお話も頂き、両方合わせて研究の骨格を少しずつ組み立てる月になりました。

1)曺喜昖先生の著書の翻訳

 先月から引き続き、聖公会大学の曺喜昖先生の著書の翻訳を進めています(出版予定は未定です)。現在韓国では、進歩的な立場からは「朴正煕時代の動員は上からの強圧による暴力的なものであった」という言説が、保守的な立場から「朴正煕時代の動員は、現在の経済的インフラの整備とともに民衆の同意に支えられていた」という言説が対立的に存在しています。曺喜昖先生は、どちらの立場も勘案しつつ、朴正煕時代の同意の形成を強圧と同意が構造的に混じり合ったものであることを描出しています。先月のレポートで提出したように、派遣者の研究領域自体についても学ぶことが多いですが、進歩的な立場を取りながらもイデオロギーを先行させて状況に偏見を差し挟まない、という研究者としての態度についても学ぶものが大きいです。また曺喜昖先生とは、翻訳をめぐることから、派遣者の研究をめぐる質問まで、メールで相談をさせて頂いています。

2)ラングウィッジ・エクスチェンジの継続

 11月から続けているラングウィッジ・エクスチェンジも、週3回で継続しています。周りの方の話されることがかなり聞き取れるようになるとともに、こちらから発信できる内容の幅も広がってきたように思います。研究とは直接関係ないのですが、日本語について説明することを繰り返すことで、母語の言語体系を(韓国語との関係で)外側からまなざすという貴重な機会になっています。

3)3月の発表の準備

 10月に発表のコメンテーターをさせて頂いた李慧真さんから、3月にある会で発表してみてはどうかというお話を頂きました。派遣者が次の論文のテーマとして念頭に置いているのは朴正煕大統領期の文化政策についてです。曺喜昖先生の議論などを参考にしつつ、朴正煕体制のもとで展開された文化政策が、当時の韓国の巨視的な歴史社会的状況の中でどのような「国民化」のビジョンを有していたのか、ということについて、研究成果をまとめるべく準備を進めている最中です。

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