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2010年7月 月次レポート(テーイプジャン・ユスプ トルコ)

TUFS-ITP月次レポート2010-07
                                                  Tayyib Yusuf

 7月に入り、イスタンブルの気温は徐々に上昇し、上旬から下旬にかけての三週間はほぼ猛暑日だった。今月は、夏休みのシーズンなので、大学や団体等が主催するイベントが比較的に落ち着いた一ヶ月であったが、私にとってずいぶん忙しい一ヶ月だった。

 まず、トルコでの滞在に関する外国人居住許可の件だが、先月末ミーマール・スィーナン芸術大学から滞在許可をもらったものの、居住許可をもらうために、警察で奨学金証明書のトルコ語訳の提出を要請された。奨学金証明書は提出すべき書類の中にはなかったが、申請に行った当日そう言われて、申請が拒否された。訳文に関して、警察からミーマール・スィーナン芸術大学に依頼するよう言われたため、状況を大学側に説明し、翻訳を依頼したが、担当者が夏休みに入ってしまっており、10日後にやっと訳文を受け取った。そして、7月27日に警察で居住許可をもらい、すべての手続きが終了したので安心した。

 次はウチュマン教授との連絡状況・研究の進展についてだが、ウチュマン教授にも滞在に関する手続きについてはご心配をいただいたので、手続きの完了についてご報告した。一方、今年10月に、トルコ民間ジャーナリズムは誕生150周年を迎えるので、これに向けて先月からトルコ語で書き始めた論文をウチュマン教授に見て頂けるよう、メールにて提出した。この論文は、1860年10月にイスタンブルで創刊された初の民間新聞「諸情勢の翻訳者(Tercümân-ı Ahvâl)」について書いたもので、現在は教授から返答を待っているところだ。

 研究の進展についてだが、上記の論文をウチュマン教授に提出するほか、今月は、先月イスラーム研究センターやバヤズィト国立図書館で行った調査の結果、確認が出来た史料を解読し、メモを作成した。更に今月は、11月下旬にパリで行われる予定の国際ワークショップの案内を頂いたので、それにも向けてイスラーム研究センターを中心に史料調査を行った。当初は、ワークショップで予定されている発表テーマに私の研究テーマを直接関係付けることが難しく感じられた。案内では予定されているテーマ以外の関連分野からの論文も受け付けるとされていたが、なるべく私が扱っている「オスマンの定期刊行物」とワークショップのテーマ「移住・移民問題」をうまく関連付けたいと考え、2週間ほど史料調査をおこなった結果、問題を解決する手掛りを見つけることができたので、締め切りまでに発表テーマと計画を提出する準備をしたいと思う。

 上記の研究活動以外に、今月はいくつかの文化活動に参加した。以下、一件を紹介する。7月29日、エスカデル(ESKADER,Edebiyat  Sanat Kültür Araştırma Derneği=文学芸術、文化研究協会)が主催するイベントの内、「バーブ・アリー座談会(Bâb-ı Âli Söhbetleri)」に参加した。今回は「チュルク世界における音楽と文化の統一(Türk Dünyasında Müzik ve Kültür Birliği)」というテーマで、トルコで最も知られている作曲家、演奏家のブンヤミン・アクスングル(Bünyamin Aksungur)氏によるトルコ、アゼルバイジャン、クリミア・タタール、ウズベキスタン、カザフスタン、トルクメニスタン、キルギスやウイグルの民間音楽の演奏が行われ、3時間にわたりチュルク世界の音楽の旅を経験させて頂いた。そのほか、座談会を司会したジャーナリストのメフメット・ヌリー・ヤルドゥム教授(Mehmet Nuri Yardım)やユルドゥズ工科大学(Yıldız Teknik Üniversitesi)のジハン・オクユジュ教授(Cihan Okuyucu)らと知り合うことが出来、座談会が終了した後、オクユジュ教授からオスマン・ジャーナリズムについて貴重なアドバイスを頂いた。非常に意義のあるイベントだった。

Tayyib7-1.JPG      写真は、左から右: Mehmet Nuri Yardım、Cihan Okuyucu、Bünyamin Aksungur

 最後に、先月に引き続きムスリム生活に関わる2件を紹介する。トルコでは夏休みに入ると、各ジャーミーの運営下でクルーアン塾(Kur'an Kursu)が開催されることが特徴的である。塾は主に女性や子供たちを対象にしている。普段は学校や家庭で忙しく、クルーアン朗読やイスラーム知識を身に付けることができない彼らにとっては、とてもいい機会のようだ。そして保護者たちも夏休みの2ヶ月を利用し、特に子供たちをジャーミーに連れてきて、そこで中心的なクルーアン朗読を勉強させることが多くあるようだ。

 もう一つは先月のレポートの中でも言及した「聖なる連続3ヶ月」の引き続きを紹介したいと思う。今月は、つまり西暦7月にはイスラーム暦で計算される二つの聖夜があった。一つは、イスラーム暦でいうとレジェブ月の27日に当たった7月9日の「夜の旅(Miraç Gecesi)」だった。イスラーム的信念によると、イスラームの柱である5行の内「礼拝」のみは預言者ムハンマドが「夜の旅」をした際、神との会話により、人間に義務付けられていると言われている。よって、この夜には、ジャーミーに行き、礼拝の重要性を強調するイマームの説教を聴く人が溢れる。そしてジャーミーでは眠らず翌朝まで礼拝する人もいるようだ。

       Tayyib7-2.JPG   Tayyib7-3.JPG
                写真は、スルタンアフメト・モスクの中と外の光景(7月9日)

 もう一つの聖夜はイスラーム暦でいうとシャーバン月の15日で、7月26日に当たる「ベラートの夜(Berat Gecesi)」だった。またイスラーム的信仰によると、この夜にはイスラームの聖書である「クルーアン」の文書が神によって天使に下りはじめ、結局「聖なる連続三ヶ月」の最終月であるラマダン月(断食月)に天使ガブリエルによって預言者ムハンマドに伝え始められたと信じられている。従って、この夜は民衆の間で「ラマダン月の前兆」とも言われて、いよいよラマダンの準備が始まるそうだ。よって、テレビであれ、普通の市場であれいずれにしても8月11日のラマダン月に向かって行われている準備の模様が現時点の特徴である。

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