トップ  »  新着情報  »  2010年2月 月次レポート(及川 茜 シンガポール)

2010年2月 月次レポート(及川 茜 シンガポール)

ITP-AA 月次レポート(2009年2月)
                                           博士後期課程 及川 茜
                                  シンガポール国立大学(2009.8-2010.2)

 春節と同時に、留学生活も最後の月を迎え慌ただしく二月が過ぎた。シンガポール国立大学(NUS)でも、1月2週目から始まった後期の授業も、2月14日の春節に合わせる形でわずか一ヶ月でRecess Week となる。もっとも、今年は春節が西暦に対してやや遅かったために休みが早まったそうで、例年はRecess Weekと重なるわけではないらしい。大晦日にあたる除夕の日に学内の図書館に行ったところ、閑散としており、特に中文図書館には人っ子一人姿が見えなかった。12月31日は普通の日曜日程度に利用者がいたので、特に華人にとってはやはり春節が年間最大のイベントになるようである。夕方からチャイナタウン(牛車水)に出かけたが、観光客やシンガポール人の家族連れに混じり、男性だけのグループが目に付いた。主に建設作業員として働いている中国からの出稼ぎ労働者のようである。春節の時期は航空券が高騰し、中国国内の長距離列車の切符も取るのが難しいということで、帰省せずにシンガポールで年を越すケースも多いのだろう。元日にあたる初一には、中国人学生宅に遊びに行ったところ、近所の戸建て住宅で獅子舞を呼んでいるところだった。外から覗いていると「入って見ていって」と奥さんが勧めて下さり、敷地内で見学させてもらった。他にも近所の人が集まっており、振る舞い酒まで出て賑やかだった。
 研究の方に話を戻すと、今月は論文執筆と並行して、学会発表への応募用原稿としてまとめる作業を中心に行った。最終週にはNUSで指導をお願いしている容先生のところに挨拶に伺い、論文に関しても最後に幾つかコメントを頂いた。七ヶ月という短い期間ではあったが、先生からは研究の具体的な内容についてはもちろんのこと、方法論や研究に対する姿勢に至るまで大変多くのことを教えて頂いた。特に、テキスト研究とは異なる角度からのアプローチについて、実例に基づいて研究手法の示唆を頂くことができたのは得難い機会であった。もっとも、私自身飲み込みが悪く、8月の来星当初に頂いたコメントで今になってようやく意味が分かってきたものもあり、一つ一つ文脈を理解するためにはまだ時間が必要なようである。留学中に何かを得たというより、接触したものをまだ丸ごと持ち帰ってきただけなので、これから時間をかけて整理、消化する作業が必要であると思っている。帰国と共に留学生活は終わりになるのではなく、これからどのように向き合うかということこそがむしろ肝要なのかもしれない。
 また、聴講しているゼミで日本の研究について紹介する機会を頂き、中国語で30分ほどの簡単な発表を行った。原稿を準備して臨んだものの、やはり日本語での場合と異なり、手際よくまとめて話すことの難しさを痛感した。今回の留学では読み書きの訓練が中心で、話すことについてはなかなか積極的に機会を捉えることができなかった。中国語の表現能力に加え、口頭発表の技術の面からも課題が残るが、今後引き続き研鑽したい。

 

このページの先頭へ