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2010年2月 月次レポート(幸加木文 イギリス)

ITP-TUFSレポート 2010年2 月
                                                  幸加木 文

 今月は今回の留学の最終月であった。トルコ留学の後、日本とは異なる距離感を有する欧州の英国からトルコを見、考える時間を持ち得たことは非常によい経験になったと考えている。
 SOASの受入教員であるヨルゴス・デデシュ先生には、これまでの研究の進捗を報告し、資料に関しコメントを頂いた。短期間ではあったが、近現代トルコの政治思想研究に対する率直で真摯な態度と、欧州諸語をはじめアラビア語、ペルシア語、オスマン語を通じたトルコ語への細やかで深い言語感覚に接したおかげで、自分が最低限獲得するべき言語レベルを再認することができた。
 研究の進捗については、論文に必須の文献読解とともに、SOASおよびBritish Libraryにて文献収集しメモを作成した。英国でも迅速かつ至便性の高い資料検索・予約システムが整備され、開かれた知の理念を体現した図書館の恩恵に浴した。尚、SOASではIDカードの有効期間の切れる10日ほど前にはセルフサービスの借出・返却ができなくなり、スタッフのいる時間内にカウンターで手続きをする必要があるようだ。
 多事多難なトルコの政治社会状況を横目に英国で過ごした3カ月は、トルコに対し英国社会が含め持つ近接さや他者性から、トルコを照射し対比する視点を常に意識させられる日々だった。今後、トルコで感得した人々の機微や臨場感、多様な意識とその表現の在り様を踏まえた地に足のついた研究をまとめていきたいと考えている。最後に、かけがえのない機会を与えてくださり関わってくださったすべての方に深く感謝を申し上げたい。


Kokaki2-1.JPG 
英国でトルコ研究に勤しみつつ、凝らしていた目の先に日本が透けて見えることがあったが、今月、約1世紀前に英国留学していた漱石の下宿先が筆者の下宿のごく近くにあったことを知った。写真には歴史的人物にゆかりの建物であることを示すブルー・プラークと呼ばれる記念銘板が見える。個人的には西洋近代と対峙した漱石の軌跡と近現代トルコとが奇しくも交錯したように思われた。

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