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2010年10月 月次レポート(テーイプジャン・ユスプ トルコ)

TUFS-ITP月次レポート2010年10月
                                                                                             Tayyib Yusuf
激しい雨に伴い、突然寒くなった10月は、中央アジアの内陸気候になれた私にとって日本からも故郷のウイグルからも遠いところにある地中海独特の気候を実感できる季節だった。最近のテレビ・新聞などでは、この激しい雨の影響を受け、イスタンブルを含めたトルコ全国から被害のニュースが流されていた。また、10月29日に行われるはずのトルコ建国記念閲兵式も当日の雨の影響でキャンセルとなり、二日間後の31日に行われた。

さて、今月における研究の進展についてだが、まず、先月に引き続きイスラーム研究センターとアンカラの国立図書館を利用して、史料収集を進めた。現在までに、初のトルコ語の民間紙が創刊された1860年からトルコ語民間ジャーナリズムの活動の中心がヨーロッパに移った1867年までの間にイスタンブルで創刊されたことが確認できた11点の新聞・雑誌のうち、9点のデジタル版をパソコンに収めることができた。オスマン帝国の軍と貿易に関する残りの二つの業界紙については未だ不明な点があり、これからこの二つの新聞について更に精確な調査、そして収集を行う予定だ。

次に、先月と同様、集めた史料の精読を続けた。今月は、1863年から1865年の間に最初は3ヶ月に一回、その後2ヶ月に一回刊行された『教訓』(Mecmua-i İber-i intiba)誌を精読し、索引を作成したほか、雑誌の刊行方針や内容そして特徴などをまとめた。

最後に、今月12日から週一回「科学・芸術協会」が担当しているオスマン語ゼミに参加している。今までの研究において、一次資料として扱っているのは、今まで携わってきたオスマン・トルコ語の印刷物の史料で、史料自体がきれいに写真化されていれば精読に問題はなかったが、これからの研究において、あるいは現段階の博士課程における研究を完成させるためには、古文書の利用も必要である。そのため、技術的かつ芸術的な能力が必要となる古文書館レベル(速記に用いられる手書き書体や政府の公的文書を解読できる能力)のオスマン・トルコ語の習得の必要性を感じている。この意味で、現在週一回参加しているこのオスマン語ゼミは絶好の機会であり、本研究の完成に補助的な意義がある。

派遣先機関における指導教員との連絡状況だが、今月はウチュマン教授の新しい研究室を訪問し、史料収集の現状やこれからの方向性について報告してアドバイスを頂いた。

レポートの最後に、10月21-22日にかけてイスタンブル大学で行われたトルコ・ジャーナリズムに関するシンポジウムについて、短く述べたい。

今年10月21日は、トルコにおいて初の民間新聞『諸情勢の翻訳者』紙が創刊され、150周年になった記念日だった(1860年10月21日)。正確に言うと、トルコのオピニオン・ジャーナリズムが誕生した記念日だった。これに関連して、イスタンブル大学の主催により、21-22日の二日間、イスタンブル大学で「『諸情勢の翻訳者』紙の誕生150周年の中、イスタンブルにおけるオピニオン・ジャーナリズム(Tercümân-ı Ahvâl'ın 150.Yılında İstanbul'da Fikir Gazeteciliği Sempozyumu)」と命名されたシンポジウムが行われた。トルコ全国の大学から研究者が集まったシンポジウムでは、オスマン時代における、オスマン特有の「フェミニズム」を主張する女性ジャーナリストの出現や共和国の一党支配制廃止後のメディアと政党との関係などを探る報告が面白かった。確かに、現代トルコにおいても、女性問題やメディアと政党との関係は議論されているトピックであり、ジャーナリズム研究を行っている研究者の関心はもっぱらこの方向に向かっているように思われる。その他、シンポジウムの間、トルコ・ジャーナリズム研究に大きな貢献を果たした研究者たちと面談を行う機会もあり、勇気付けられた。

今後も、引き続き史料調査・収集を行い、オスマン語ゼミにも参加していく。

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