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2009年8月 月次レポート(幸加木文 トルコ)

 ITP-TUFSレポート 2009年8月
                                                                                                     幸加木 文
 
 今月は、オランダのライデン大学にて開かれた、アジア・アフリカ研究教育コンソーシアム(CAAS)主催による26、27日の国際カンファレンスの聴講と、28日のワークショップで行った研究報告に関する反省点を中心に報告させて頂きたい。

1)国際カンファレンスについて
 「Religion, Identity and Conflict」という主題で開かれたカンファレンスの基調講演では、まず19世紀以降、宗教への関心が神学と宗教学に二分化し、その後ナショナリズムや世俗化の影響を経て、現代では宗教の政治化とトランスナショナル化に関心が集まっているとの概説が述べられた。その文脈を踏まえて、当会議の主題である宗教とアイデンティティ、権力、そして対立/衝突といった問題について、インドと中国の個々の事例に関する解説と比較の視座からの考察がなされたと理解した。
 その上で行われた各研究者の発表については、自分の関心事項の一つである宗教の政治化に関する事例に絞り、その国や時代、宗教の違いによる問題の多様性を学ぶというスタンスで聴講した。共通あるいは異なるディシプリンを土台に研究上の議論が成立する様を観察し、また各研究者の発表や質疑応答の自在さを目の当たりにしたことにより、自分の現状の問題点を知るなど多くを学んだ。

2)国際ワークショップについて
 自己の研究報告に関しては、ワークショップのセッションに出席してくださった先生方より、おそらくは英語によるプレゼンテーションのために身につけておくべき基本的スキルのほぼすべてをご指摘いただいたのではないかと思う。
 具体的には、英語母語話者による事前チェックは必須、一文を短く簡潔にする、必要な間をとる、読み上げ原稿は論文の文章からは作成しない、また文章ではなくポイントのみを大きな文字で箇条書きにしたメモを用意し読み上げない、冒頭でディシプリンと明らかにしたい点をまず一文で述べ、聞くべきポイントを提示する、時間厳守を前提にセッション内の発表順から持ち時間の伸縮を計算にいれておく、語りかける姿勢で話す、顔をあげてアイコンタクトの姿勢をとる、オーディエンスの気を逸らさないために英語以外の言語の単語を極力使わない、などであった。英語のつたなさ、発音の悪さの点でもご指摘を頂いたが、この点は上述のスキルを身につけることで改善できるとの激励も頂いた。また、他の大学院生の発表姿勢からも多くの刺激を受けることができた。
 個人的には、緊張のコントロールという点で以前よりやや改善できたことを除けば、上記の点および時間内にまとめ切れなかった点など、反省点の多いプレゼンとなった。

3)総体的な感想
 総体として、当日に至るまでの準備期間にこそたくさんの反省点があったといわざるを得ない。比較的早い時期から全体の趣旨説明を頂いていたが、こうした中長期戦をどのような時間的見通しに立って準備し、研究の進捗を確認していくのか、言いかえればいかに自己を律していくかを体得することも、今回与えられた機会であり課題であったと思う。
 また、開催10日前に参加者全員に配布された論文にざっと目を通していた時点で、抽象的な印象ではあるが、きちんと前を向いた研究が集まり交錯する熱気のようなものが立ちあがってくるのを感じていた。翻って、自分の提出論文は修正版を自主的に再提出せざるを得ないほど未熟なものであった。最低限得たこととして、様々な試行錯誤から幾つか自分なりの研究の進め方を見いだし得たことのみ挙げておきたい。
総じて、留学中ではあったがこうした経験を積むことができたことは得難い機会だったと考えている。次の機会を頂けた際にはもっと研究の質と完成度をあげて臨みたいと強く思った次第である。
 最後に、見守ってくださった先生方、関係者の皆様方に心からの感謝を申し上げたい。

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会場となったライデン大学の建物とその裏手の通り。細かに敷かれた古い石畳は足を取られることもなく非常に歩きやすく、ゆったりと広がった運河沿いの道と渋い色合いの建物が続く大学近辺は、自然と背筋が伸びるような雰囲気のよい界隈だった。

 

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