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2009年8月 月次レポート(足立享祐 イギリス)

月次レポート(20098月分)

 

                                                                 ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)派遣者

                                                                          足立享祐(2009322日~921日)

 

 

 8月最終週の月曜日、サマーバンクホリデーが終わり、早くも9月になろうとしている。帰国まで残された日数も1ヶ月を切ることとなった。夏休み期間は現地指導教官もドイツへ一時帰国されており、当初の打ち合わせ通り、公文書館で自主的に調査研究を進めると共に、日本の指導教官に草稿を送付し、研究指導を受けている。これまで、1800年から1860年にかけての聖書翻訳、ボンベイ管区条例、東インド会社職員養成に関連する資料の調査・収集を概ね終えている。

 

 この時期のボンベイ管区におけるマラーティー語論の形成において中心的人物の一人が、ケネディ(Vans Kennedy 1784-1846)である。ケネディは、1800年に士官候補生となり、ボンベイ管区に赴任後、ボンベイ文学協会員など優れた東洋学者の一人として活躍している。『アジアおよびヨーロッパの主要言語の起源と類縁性に関する研究(1828)』、や『古代およびヒンドゥー神話の性質と類縁性に関する研究(1831)』などウィリアム・ジョーンズ以来の比較言語学の手法を利用した研究で知られている。更に彼はまた、キャレイのマラーティー語聖書を批判し、また東洋語翻訳官としてボンベイ管区職員の現地語試験委員会の委員を務めている。

 

 マラーティー語に関しては、ケネディが編纂した辞書(A Dictionary of the Marat,ha Language, in two Parts: Marat,ha and English; English and Marat,ha. Bombay, 1824. {BL W1067}並びに監修を行った文法書( A grammar of the Mahrat'ha language / by Muhummud Ibraheem Mukbah Moonshee ; revised by Vans Kennedy ; and published under the sanction of Government. Bombay : Printed at the Courier Press, 1825.{BL W 2124}のいずれもが英国図書館に所蔵されている。

 

 ケネディは自ら編纂した辞書において、当地に流通するマラーティー語を (1) サンスクリットに強く影響を受けたもの、(2) アラビア語・ペルシャ語・ヒンディー語から自由に借語するもの、(3) 耕作者・下層階級によるもの三つに区分している。ケネディのマラーティー語観もまた、その後のボンベイ管区において克服されることになるが、これについては引き続き調査を進める予定である。

 

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