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2009年4月 月次レポート(足立享祐 イギリス)

月次レポート(20094月分)

ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)派遣者

足立享祐(2009322日~921日)

 

 現地到着後、約1ヶ月が経過した。イースター休暇を終え、新学期も始まったことでキャンパスには活気があふれている。派遣先においては受入を担当していただいているProfessor Andrew Gerstleにご挨拶を行った後、英国図書館などを含め、図書館・文書館での調査を開始している。研究上のメンターを担当していただく南アジア研究センターのProfessor Ravi Ahuja1ヶ月の現地調査で不在であったが、つい先日、新学期の開始に伴い帰国された。現在、これまでの進捗について報告と、今後のSOASで留学・研究についての面談をお願いしている。

 南アジア史研究を行う上において、留学対象としてインドではなく欧米を選択することに対し、疑問をもたれることはよくある。様々な回答が可能だろうが、一つにはイギリスという国が、植民地主義の中で制度化させて以来、収集してきた資料の存在があげられるだろう。少なくとも南アジアの近現代史研究は、インドとイギリス、いずれかを無視して成り立つ類のものではないと思われる。

 SOAS図書館には多くの地域研究に関する資料が所蔵されているのはよく知られたことであるが、アーカイヴズ・マニュスクリプトの部門が確立されていることは特筆すべきであろう。所蔵資料の対象とする地域は、アジア・アフリカ・カリブ・太平洋という広範囲にわたる膨大なものである。また同時に目録もよく整備され、現在、約35,000点がオンラインで検索可能となっている。

 特に重要なのは、アカデミックコーディネーターによるによる文書の体系化と資料の電子化を共存させている点にある。例えば、SOASの人類学教授で南アジア人類学に大きな足跡を残したフューラー・ハイメンドルフ(Christoph von Fürer-Haimendorf : 1909-1995)の文書群も同アーカイヴズに寄贈されているが、このコレクションは、200010月に目録の作成が完了し、整理番号「PP MS 19」として公開され、現在、彼が現地で撮影した貴重な写真記録のデジタル化が、研究プロジェクトとして進められている。

 アーカイヴズには、個人文書・企業資料など、様々な資料が含められているが、特に重厚なコレクションとなっているのは、所蔵資料の約2/3を占めるとされる、海外宣教の記録である。1795年に設立されたロンドン伝道会(London Missionary Society)をはじめとする各宣教団体の記録は当時の南アジア社会への認識を知る上で貴重な資料である。これらの記録については、マイクロフィルム化され、一部は東京外国語大学をはじめ、日本国内にも招来されているが、アーカイヴズに含まれるすべての資料が手に入るわけではない。特に今回の派遣期間中においては、言語関係の資料、特に辞書や文法書、翻訳聖書や現地語での出版物について、調査を進める予定である。

2009430

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