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2009年12月 月次レポート(幸加木文 イギリス)

ITP-TUFSレポート 2009年12 月
                                                幸加木 文

 今月より英国に居を移し、3カ月という短期間ではあるが、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)での留学を開始した。
 SOASでの指導教員をお引き受け頂いたヨルゴス(ジョージ)・デデシュ先生には今月半ばにアポイントを取り、自己の問題関心とSOASでの研究計画を伝え、近現代トルコにおける知識人、文学者に関する資料について様々な指摘や示唆を頂いた。今後、紹介して頂いた資料を閲覧しより焦点を絞った研究概要を報告する時間を再度とって頂く予定である。また、院生向けのトルコ語クラスに出席できるよう計らって頂き、本年ラストの講義に出席した。
 研究の進捗については、トルコで収集し英国に郵送した分の資料の到着を待つ間、推薦して頂いた資料をSOAS図書館で入手し読書メモの作成を順次進めた。SOASの図書館は必要な棚とエリアを把握すれば問題ないが、基本的に地域別に配架されているため、図書番号が近くても同じエリアにあるとは限らず、またスペースの都合と思われるが、棚の配置自体がかなり入り組んでいるように見受けられた(2010年1月より所蔵資料の移動作業が行われる予定とのこと)。因みに、客員研究員待遇の場合一度に50冊まで借り出すことができ、ほとんど上限を意識する必要がなかった。なお、ITPによるSOASへの派遣者としては4人目になるが、これまでの派遣者の方々の月次レポートにある情報を参考にさせて頂き、とてもありがたかった。
 その他、トルコから英国への物理的な移動に伴い、見聞きする物事にも変化があったが、特に宗教行事に関する社会的な対応の差異を観察することができ興味深かった。また、トルコ語をはじめ様々な言語の会話が聞こえてくる一方で、母語として以外に共通語としての英語を話す人たちも多く暮らす社会では、容姿のみで他者のアイデンティティや運用言語を推し測ることはできないという事実を再認した。なお、こうした社会状況を背景に、ロンドンにおける中東関連の記事やインタヴュー、本や映画評の他、毎月のイベント情報が掲載されたThe Middle East in Londonという月刊誌がSOASのロンドン中東研究所より刊行されている [1]
 1年の終わりにあたり進捗を振り返ると、まだまだ研究のとば口にいるに過ぎないという思いが強い。試行錯誤に要する時間も加味しつつ、目の前の小さな目標を達成できるようにこの貴重な留学期間を過ごしたいと改めて思う次第である。
 
Kokaki12-1.JPG
写真は、SOAS近隣にあるブリティッシュ・ミュージアム所蔵の16世紀頃に作られた真鍮の弁当箱。「ここに美と意味に満ちたかたちがある。この美に全力を注ぐ者は目の愉楽を得るだろう」というアラビア語の詩が刻まれているとのことで、研究にも一部通底するように思われた。

 [1] http://www.lmei.soas.ac.uk/events/

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