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2008年9月 月次レポート(中島久朱 イギリス)

ITP月次レポート

地域文化研究科

博士後期課程

中島 久朱

派遣地:ロンドン(SOAS

 

 200891日よりロンドンでの派遣調査を開始した。まず、調査に先立ち生じた問題に簡単に触れる。今回がITP開始後初めての派遣であったため、直前まで派遣先であるロンドン大学東洋アフリカ研究所(School of Oriental and African Studies: SOAS) での身分等が判明するのに時間がかかった。そして、渡英する1ヶ月半程前になって手元に届いた同大学からの招聘状には、本プログラムによる受入の場合、現地での身分は訪問研究員(テンポラリー・スタッフ)となり、学生ではないということが明記されていた。一方、英国の査証を取得する際には、学生とは別に学術訪問(Academic Visitor)というカテゴリーがあるが、この査証の取得には日本国内の学術機関等に専任の研究者として所属していることが必須の条件となり、博士後期課程の学生の身分では受理されないということが渡英1ヶ月程前に判明した。以上のような経緯から、派遣期間を当初予定していた7ヶ月から1ヶ月短縮し、6ヶ月とすることになった。日本国籍を有している場合は、最大6ヶ月まで査証なしでの滞在が可能であるためである。[i]ただし、入国審査の際に6ヶ月の滞在予定を告げた際には、入国審査官より現地での滞在目的や滞在先等詳細な質問を受け、審査に普段より長い時間を要した。SOASからの招聘状、学術戦略本部より発行された派遣証明書、復路の航空券、滞在先の住所等を提示すると同時に、今回の研究の目的や過去の同国での滞在時の研究活動の内容等の説明をし、1520分程かけて入国が認められた。

 派遣先であるSOASはロンドンの中心であるZone1のやや北寄りに位置しているが、周辺にはロンドン大学の別のカレッジや大英図書館等が点在しており、文献等の収集をはじめ研究調査には非常に便利な立地にある。特に、今回の調査では人類学関連の専門書および学術誌が充実しているSOASの図書館はもちろんのこと、道を隔てて正面にあるロンドン大学教育学大学院(Institute of Education: IOE)の図書館も頻繁に利用している。IOEの図書館では、国内外の機関の博士課程に在籍する学生であれば誰でも無料で入館証の発行を申請することができ、いつでも自由に資料の閲覧ができる。その他ロンドン大学の各カレッジの図書館でもSOASIDカードを提示することで利用ができる。[ii]また、イギリス国内の他の都市での調査を行う際には、特にイギリス中部から北部方面に向かう場合であれば、同大学から徒歩圏内にあるEustonSt.PancrasKings Cross等の駅から運行されている長距離列車を利用することができる。

 SOASでの研究活動にあたっては、日本学研究科のガーストル教授にメンターとなっていただいている。ガーストル教授にはロンドン到着後、数回面会の時間をいただき、今回の調査の計画に関する報告をし、同校の大学院の授業プログラムより聴講を希望する授業の担当教員を紹介していただいた。なお、聴講を予定する授業は10月の第1週より始まるため、内容等に関しては来月以降の報告書にて述べる。

 また、自身の研究活動に関しては、日本出国前より面会の申し込みをしていた数名の研究者に面会の機会を得た。特に、IOER.コウエン教授には比較教育学的視点から、同じくIOEJ.グンダラ教授にはマイノリティ教育研究に関連する視点からのアドバイスをいただき、研究への大きな示唆を得た。調査を予定する現地の小学校では、9月最終週より調査を開始することを予定していたが、急遽、教育水準査察局(Office for Standards in Education: OfSTED)よりその週に査察[iii]を行うとの連絡が入ったことから、調査の開始は10月に繰り越された。急な変更ではあったが、これも同国の教育現場の現状を感じる出来事であったように思う。なお、同査察は46年に一度行われるもので、その結果は本研究にとっても非常に興味深いものである。

 

 



[i] 査証なしでの滞在には現地で収入を得る職につかないこと等が前提となる。

[ii] 入館証の発行には学生証の提示が必要となる。利用には各大学がもうける制限があり、IOEの場合、貸出しはできないが館内に設置されているコピー機を利用して資料の一部をコピーすることが可能である。

 

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