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2008年12月 月次レポート(幸加木文 トルコ)

TP-TUFSレポート 2008年12月
                                                 幸加木 文

 まず、派遣先機関における指導教員との連携・連絡状況についてであるが、イスタンブル・ビルギ大学欧州連合研究所所長のアイハン・カヤ准教授のゼミに出席し、分析概念に関する学生の発表を軸に、そのトルコ政治・社会への応用等について議論した。秋期のゼミは今月でラストとなり、以降は各自選択したトピックに関するレポートを提出し、研究指導については個別に面談を申し込む態勢となる見込みである。
 次に、研究の進捗状況については、研究対象団体を訪問し2度目のインタヴュー調査を実施した。その後、収録した音声データの文字起こしと付随する種々の連絡作業を行った。また、研究資料収集およびその読解作業を継続するとともに、ビルギ大のオンライン文献データベースを利用し、関連の先行研究論文を中心にダウンロード作業を行った。最終月となったISAM秋期セミナーでは、トルコ以外の社会と宗教運動の相互関係に関する講義から比較の視点を学んだ。また、ナチュラルスピードのトルコ語による講義を聴講し質問する力を鍛える場ともなった。その他、来年度の研究計画を作成し、トルコ語の新聞記事翻訳を行った。
 生活状況については、先月に引き続きさまざまな機器の不具合に対応した。特に、零下になるのは稀ながら本格的な冬を迎えた中、主要な暖房機器であるガス機器が再度故障し修理に関する交渉を行った。
 その他、今月観察した事象について写真とともに若干報告する。

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今月8日の犠牲祭初日、牛や羊などの犠牲獣の一連の屠殺・解体過程を見学した。筆者が見学した場所では、国民教育省と宗務庁による20時間の犠牲獣屠殺コースを受講した有資格者の他、近くの学生寮に住む男子大学生・院生が作業にあたっていた。余った肉と食事が提供される以外は無報酬で2日交代制の奉仕活動をしているとのこと。持ち場毎に4~5人のチームを組み、事前に配布されている屠殺予定時刻にあわせて続々と訪れる人々にてきぱきと応対していた。

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メヴラーナーの墓所があり、毎年12月に彼を記念する催しが開かれるコンヤで、セマーと呼ばれる旋舞を観た。トルコにおけるイスラームはスーフィズム的な要素にその特徴を見出せると言及されることがあるが、元来スーフィーの修行の一環であったこのセマーも、共和国建国期のスーフィー教団閉鎖に伴い、現代では「伝統芸能」の一つとしてショーアップされたものである。

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かつてのオスマン朝の首都イスタンブルの巨大なドームを擁するジャーミィ(モスク)に見慣れた目には、ルーム・セルジューク朝の首都コンヤの平屋主体のシンプルな建築は新鮮に映る。13世紀前半に建造されたアラアッディン・ジャーミィの内部は鉄筋の梁で補強され、やや無粋な印象を受けるが、21世紀の今日にも日常の礼拝の場であることが窺える。また、コンヤへの往復のバス・ターミナルでは、兵役につく若者を見送る家族や友人の輪ができ、抱擁を交わし写真を撮りあい、歌い胴上げをするなど、盛大に送り出す光景を多く目にした。

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イスタンブル・カドゥキョイにて開催された「本の日」というブックフェアの模様。この会場でアッティラ・ドゥラク『エブル:トルコにおける文化的多様性の反映』(Metis出版、2007)という写真集を入手した。トルコ各地のさまざまな言語による歌が収録されたCDが添えられ、「文化的多様性」の認識をめぐる緩やかな社会変化の一里塚的な作品であろう。

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電飾の取り付け作業が進む新市街・タクスィム広場。街には電飾ツリーやサンタクロース風ケーキなど日本の「クリスマス」を思わせるものも存在するが、こちらではあくまで「新年」を祝うためとのこと。イスラエルのガザ大規模攻撃により暗い年の瀬となってしまったが、イスタンブルで迎えた2008年の暮は降誕祭や暦、年末に対する固定観念が揺さぶられる機会ともなった。

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