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2008年11月 月次レポート(幸加木文 トルコ)

ITP-TUFSレポート 2008年11月
                                                                                                           幸加木 文

 今回の派遣期間である全34週のうち、折り返しを今月最終週に迎え、自力で舵を切るということがテーマとなった月であった。
 まず、派遣先機関における指導教員との連携・連絡状況についてであるが、イスタンブル・ビルギ大学欧州連合研究所所長のアイハン・カヤ准教授のゼミに出席した。関連文献についての情報提供を受けるとともに、ゼミでは出席者の母語以外の言語で簡潔に自分の思考を人に伝える力に啓発されることも多かった。
 さらに、ビルギ大同研究所とイスタンブルのゲーテ研究所の共催で、11月7~8日の2日間にわたりビルギ大ドラップデレ・キャンパスにて開催された、「Religious Instruction in Secular Societies and Laicist States: Turkey and Germany」という国際学術会議を聴講した。カヤ先生の発表からはトルコと欧州諸国における各宗教の置かれている状況と課題について多くを学んだ。尚、当会議では関連研究を行っているトルコの若手研究者と知り合えたことが収穫の一つであった。
 次に、研究の進捗状況については、上述の会議のメモをまとめた他、図書館、ブックフェアおよびインターネットにより研究テーマに関する資料収集を継続して行った。また、週一回開催のビルギ大シネマ・サロンにて2007年のトルコの総選挙を扱った秀逸なドキュメンタリー映画を観、現代トルコに関する様々な問題提起の作品として、自己の研究・勉強にとっても有益な示唆を受けた。さらに、研究対象の団体を訪問し、インタヴュー調査を行った。その他、ISAM秋期セミナーを受講し、トルコ語の新聞記事翻訳を行った。
 生活状況については、体調不良により思うように動けずにいたことに加え、頻発するさまざまな機器の不具合への対応に時間を取られ、焦りだけが募る空転する日々にじっと耐えざるを得ないことも多かった。
 その他、今月観察した事象について写真とともに若干報告する。

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イスタンブル郊外にあるTÜYAPという大規模催事場にて開催されたイスタンブル・ブックフェアの様子。大手版元も多く出店し、その年の新刊を含めた書籍が割引価格で入手できる。40年前にスタートし今年で27回目を迎えたブックフェアは、毎年11月初旬に開催されているとのこと。荷物を預ける場所がない点が惜しまれる。訪問した当日は、学校行事の一環で来ていた小中高生で開場前から混雑していた。

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上述の国際会議の模様。カヤ先生が主催者の一人であるビルギ大開催の国際会議では、ほぼトルコ語とパートナー機関の言語が使用され同時通訳がつく態勢となっている。無論コミュニケーション言語としての英語の必要性が減じることはないが、「国際」がすなわち英語使用を意味する在り方に対し、多様性と「他者」に開く思想を体現した態勢のようである。

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イスタンブル・ウスキュダル地区の埠頭付近にある無料のスープ配布車。前面が屋台のように開き内側からスープが提供される構造になっている。運営主体である自治体のサイトによれば、このサーヴィスは今年2月に始まり、出勤時刻に合わせた毎朝6時半から8時まで配布されているとのこと。筆者が数度見かけた限りでは30メートルほどの行列ができており、なかなか盛況なようだった。

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ボスフォラス海峡上、雲が翼を描く空の下、観光客(あるいはイスタンブルっ子)の遊びの一つ、フェリーからのパンくず投げによって瞬時に20羽以上のカモメが集まり、眼前をにぎやかに飛びまわる。彼らを追って連写モードでカメラを構えていると、光の反射も、潮の香りも、風の冷たさも、飛び交う鳥も、ここにいる己も、何一つとして今一瞬の後に同じものはないという思いにふととらわれる。限られた時間を惜しみなく過ごしたいと改めて思う次第である。

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