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2008年10月 月次レポート(幸加木文 トルコ)

ITP- TUFSレポート 2008年10月
                                                  幸加木 文

 はじめに、2008年10月次の派遣先機関における指導教員との連携・連絡状況についてであるが、イスタンブル・ビルギ大学欧州連合研究所所長のアイハン・カヤ准教授のゼミに出席した。トルコ人院生のほかドイツ、アメリカからの留学生が参加するこのゼミの主旨は、多様化する世界において「我々は共生できるのか?そうであれば、いかにして?」という問いの答えを模索し、学んだ理論を個々の問題に引きつけて考えることにあるとの説明を受けた。教員と学生のディスカッションが基本のゼミでは、トルコの抱える問題を反映するようなクリティカルな意見が相次ぎ、目を開かされることがしばしばあった。
 また、ビルギ大同研究所とフランス・アナトリア研究所(IFEA)、グレノーブル政治学研究所の共催で、10月23日-24日にビルギ大サントラルイスタンブル・キャンパスにて開催された、「トルコとフランスにおける共和国-欧州の視座におけるトルコとフランスの共和政制度の歴史と進展」 [1] という土仏比較セミナーを聴講した。カヤ先生の発表を始め、土仏の公的領域における宗教の可視性、宗教教育のあり様、市民権問題などについての発表やフロアとの活発な質疑応答から学ぶとともによい刺激を受けた。
 次に、研究の進捗状況については、上述のセミナーのメモをまとめた他、ビルギ大学およびイスラーム研究センター(ISAM)の図書館にて研究テーマに関する資料収集を行い、読書メモを作成した。また、10月20日から12月まで開催されるISAMの秋期セミナーを申し込み、受理された。自己の研究にとって有益な知識を得るとともに、トルコ人研究者、院生と知り合う場としても活用したいと考えている。その他、論文の推敲作業を終えるとともに、トルコ語の新聞記事翻訳を行った。
 生活状況については、先月に引き続き、生活および研究環境における様々な修復作業を隣人や友人の助けを得て行った。また、滞在許可をイスタンブル警察署に申請し指定日に受け取りに行ったが、事務処理が済んでいないとのことで再度出向く予定である。尚、この滞在許可を取得するにあたり、窓口対応など全プロセスにおいて「外国人」として在ることについて考えを巡らす機会ともなった。
 その他、今月観察した事象について写真とともに若干報告する。

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イスタンブル・ビルギ大のサントラルイスタンブル・キャンパスの光景。私立大学でも大学によって対応に差が見受けられるが、当大学はキャンパス内での女性のスカーフ着用は問題視されない。他方で、学内にはカフェやレストランのほか酒を供するバーもあり、昼からエフェス・ビールを飲む人たち(学内のギャラリーを一般開放しているので学生とは限らない)を見かけることもある。右の写真は、ビルギ大にて今月開催されたメディア関係のシンポジウムの模様。トルコの主要新聞の記者たちが、どのような思いで報道の第一線に立ち、いかなる問題と闘っているのかなどについて語り、情報の受け手としてその背景事情を知るよい機会となった。

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9月30日からラマザン/シェケル・バイラム(Ramazan/Şeker Bayramı; Eid al-Fitr;断食月明けの祭)が始まった。バイラム初日に金角湾を北上してエユップ・スルタン・ジャーミィ(Eyüp Sultan; Abu Ayyub al-Ansari )を訪問した。ムスリムの聖地の一つとして、トルコでも多くの参拝者を集めるジャーミィの筆頭で、規模はさほどではないものの静かな力と風格を感じさせる佇まいである。礼拝が始まるところだったが2階の女性用礼拝場所から見学させて頂いた。構内にあるアイユーブ・アル=アンサーリの廟の前(写真右の右手の窓の向こう)では祈りをささげる人々が引きも切らない。

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共和国記念日(Cumhuriyet Bayramı)の10月29日、8月の戦勝記念日以上に街中に溢れるトルコ国旗を目にしつつ、「トルコでは真に愛国者であるか否かより、愛国的に見せることが極めて大事」というトルコ人から聞いた話を思い出す。写真右は、同記念日の祝祭の一環でボスフォラス海峡上を赤々と染めた花火。夜空を震わす打ち上げ音を感じ降り流れる生々しい光を見上げながら、これが平和な音と光でよかったと不意に思わされるような出来事がこのところトルコでは起きている。

[1]  詳細は右記のURL参照 http://eu.bilgi.edu.tr/news01.asp?id=58&m=2

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