解題
野本京子センター長と坂本惠副センター長(いずれも当時)のもとで立案・実現された『日本をたどりなおす29の方法――国際日本研究入門』(東京外国語大学国際日本研究センター編、2016年)について、国内外で、日本語非母語話者を対象として、さらに高校教育の現場で、多角的に進められている活用の経験を集めてみようとしたのが、このシンポジウムの狙いであった。同書は、言語学・文学・歴史学・経済学などの人文諸科学の分野において、留学生教育の経験などのリサーチを踏まえて、東京外国語大学の教員が中心になってテキスト本文を書きおろして出版されたものである。しかもそれぞれのテキストについて、日本語教育の専門家たちによる全面的なチェックとタスクの設定が施されている。いわば本書はベストの布陣で作成された日本語教育の教材である。しかしながらこのシンポジウムでは、まだまだ検証も工夫も可能であること、さらには思いがけない活用の可能性があることを気づかされた。シンポジウム報告者と参加者のみなさんに感謝するとともに、このテキストを通して、国内外のさまざまな教育・研究の場面で、さまざまな読者たちとともに、まだまだ広がっている未知の可能性をたどってみたいと思うものである。
東京外国語大学国際日本研究センター
センター長 友常勉
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