活動報告

Activity Reports

センターの活動報告です

東京外国語大学 国際日本研究センター 比較日本文化部門 主催「Korean monks and Ottoman dervishes: Globalized Orientalism between Japan and Turkey」(2018年9月28日)

国際日本研究センター比較日本文化部門主催 講演会

Korean Monk and Ottoman Darvishes: Globalized Orientalism between Japan and Turkey

2018年9月28日(金)18:00~20:00 
東京外国語大学 府中キャンパス 本部管理棟 2F 中会議室

●エドヘム・エルデム氏(ボアズィチ大学、コレジ・ド・フランス)
●コメンテーター 岩田和馬(本学博士後期課程)、友常勉(本学教員)

近代トルコの外交官・考古学者、そして成功した画家でもあったオスマン・ハムディ・デユの画業をたどりながら、オリエント内部のオリエンタリズムを検討する。この目的のもとでおこなわれたエドヘム・エルデム氏のプレゼンテーションは、ハムディの画業が、考古学的な画像やテキストなど、多様なレファレンスのパッチワークから構成されており、そうしたレファレンスを通して、オリエンタリズムを再構成するというプロジェクトにきわめて自覚的であったハムディの企てを、大胆かつ繊細、そして緻密な論証によって示すものであった。たとえば代表作の『亀と男』(1906年)について、亀を調教する道士について記述されていた朝鮮のテキストとイメージがこの作品のレファレンスであることを実証的に明らかにしたその手続きは圧巻であったが、興味深かったのは、オリエント内部からオリエンタリズムの言説を創造することが、なにゆえかくまで自明化されていたのかということであった。エルデム氏の論証は、私たちに、オリエンタリズムとは出口のない言説であるという深刻な感慨を残した。イスラームとの関係からいえば、ハムディそのひとは、やはり代表作のひとつである「ミフラーブ」(1901)では、妊娠している女性(ハムディの娘とされる)は、イスラーム関係のテキストを足下に敷いている。それはハムディとイスラームとの距離を示すひとつの主張である。このようにハムディとはイスラーム的というよりも、西洋文明・文化を享受した西洋的なトルコ・ナショナリストであったが、オリエンタリズムの生産については、きわめて自然なマナーでそれを遂行しているのである。ワークショップでは、そうしたハムディを、当該時期のトルコの諸階層の動向と照らし合わせて報告した岩田和馬氏(本学博士後期課程)、およびハムディと同様の実践を遂行したと位置づけることが可能な岡倉天心のオリエンタリズムについての報告(友常勉)が、エルデム氏の研究を浮かび上がらせる目的で、あわせておこなわれた。トルコ研究にとどまらない普遍的な文化史・社会史研究の見事な実例をみせていただいたエルデム氏に感謝するとともに、サイード以降のオリエンタリズム研究の実相を肌で感じることができる、貴重な時間であった。(友常勉)


エドヘム・エルデム先生


ポスター (PDFファイル)