活動報告

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センターの活動報告です

東京外国語大学 国際日本研究センター 比較日本文化部門 主催 「女性をターゲットとした戦後日本の自動車広告 ―社会規範の変化の観点から―」(2018年5月24日)

東京外国語大学国際日本研究センター比較日本文化部門主催ワークショップ

「女性をターゲットとした戦後日本の自動車広告――社会規範の変化の観点から」

2018年5月24日(木)17:45~ 

報告者 オリガ・ホメンコ氏

キエフ・モヒーラアカデミー国立大学人文学部歴史学科准教授。
博報財団・国際日本研究フェローシップで外国語大学国際日本研究センター特任研究員

自動車は高い社会的なステータスの象徴でありながら〈男性的な〉象徴でもある。女性向けの自動車マーケティングは、日本ではいつ始まったのか――雑誌広告のうえでは1950年代後半にはじまる自動車会社の女性に対する関心を、そのときどきのレジャーや女性のステータスとの関係を読み取りながら示す。いわば戦後日本社会史において、経済的発展と消費文化の関係、女性の社会規範を考慮しつつ、女性の「幸せ」をめぐる広告研究という視角を提示することに、オリガ・ホメンコ氏の報告の意義があった。

博報財団のフェローシップとして来日したホメンコ氏の研究テーマは、「幸せを求めて――戦後日本の婦人雑誌広告と女性」である。まず「幸せ」をメディア研究のテーマとすること自体に斬新さがあるが、それはそれに対応した研究方法の確立を必要とする。多くの場合、女性の幸せはジェンダー研究が主要な課題としてきたのであり、それをメディア研究の側で切り取ろうとするものだからである。そこでホメンコ氏は、十分なデータ収集を研究課題とした。その作業の一環として報告されたこのワークショップで提示された、ホメンコ氏の見通しとは以下のようなものである。・1948年から1979年における女性像の変化が4つの段階で起きたこと、・高度成長と共に物質主義的な「幸せ」モデルが形成されたこと、・1970年代後半から戦後の「幸せ」モデルが揺らいだこと、である。こうした結論を、ホメンコ氏は、日本の高度経済成長という物語に単純に還元していない。「幸せ」の概念は、時代、経済環境、自然被害などの影響を受けて、移ろいやすい。「幸せ」は個人的であると同時に集団的な概念であり、個人の美的道徳的価値であると同時に規範的である。豊富な自動車広告の資料を用いながら示されてきた女性の表象は、必ずしも単線的ではない「幸せ」をめぐる物語の広がりと収束をよく表すものであった。


オリガ・ホメンコ先生


会場の様子


ポスター (PDFファイル)