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「ダライラマ13世代における宗教政策と仏教の役割」  浅井万友美

研 究

  ロシア連邦ブリヤート共和国首都ウラン・ウデ市のハンガロフ歴史博物館に所蔵されているチベット語文書を閲覧し,その内容や性格などを確認すると同時に,時間の許すかぎり書写を進めることを第一の目的とした。さらにブリヤートにおける史料の所蔵・公開状況について情報を集めることもめざした。

  今回調査の対象とした史料は,13世を初めとするチベット政府の枢要メンバーや,おそらく当時チベットに留学していたブリヤート人仏教僧らからドルジエフに宛てて送られた書簡群である。これらはロシア科学アカデミーシベリア支部モンゴル学・仏教学・チベット学研究所研究員,ニコライ・ツィレンピロフ氏により近年「発見」されたものである。53件からなる同文書は,49件がチベット語で書かれたもので残りがモンゴル語による。

  この文書は報告者の今後の研究と関わる可能性の大きい,非常に重要なものである。報告者はダライラマ13世代における宗教政策と仏教の役割を研究課題としており,特に13世がどのような宗教政策を理念として構想していたか,宗教の長として内外でどのような問題を抱え,その中で仏教をどう位置付けていこうとしていたか,あるいはそうした彼の姿勢がチベットをどう規定したかといった問題に取り組みたいと考えている。同文書には,13世の思想や姿勢を知るのに有益な内容が多く含まれているものと推測できる。

  同文書の調査により,チベット近代史研究におけるチベット語史料の活用は,確実に前進するものと思われる。さらには同文書が報告者個人の研究にとどまらない,より広い研究領域に何らかの貢献をする可能性も生まれるだろう。敦煌出土のチベット語文献が大英図書館やフランス国立図書館によるプロジェクトで整理公開され,歴史学のみならず古チベット語研究など他の複数の分野においてもその進展に貢献しているように,チベット近代の史料が広くチベット学全体に寄与するための一助になることを期待している。

  詳しくは学術調査報告書(PDF)をご覧ください。


報告者

  1. 名前:  浅井万友美
  2. 研究テーマ:  ダライラマ13世代における宗教政策と仏教の役割
  3. 渡航先:  ロシア連邦ブリヤート共和国ウラン・ウデ市
  4. 旅行期間:  平成20年3月7日~2008年3月22日(16日間)
  5. 調査旅行の概要:  ハンガロフ歴史博物館所蔵のアグワンドルジエフ文書のうち、チベットのダライダマ13世ほかからドルジエフに宛てて書かれたチベット語による書簡(約50点)を閲覧し、その概要を知ること、および内容をできる限り確認すること。同博物館を初め、ブリヤート共和国において史資料を保存している機関の名称と所蔵内容、公開状況などを確認すること。
  6. 学術調査報告書(PDF


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