紛争後のシステムにおける開発と紛争

トロン・ギルバーグ(パニャサストラ大学 カンボジア)

私のプレゼンテーションでは以下の言葉/概念およびその相互関係を検討する。

紛争、暴力、平和、変化、開発、移行、賄賂、寛容の限界。

まず「分析レベル報告」をする。紛争は、個人、集団、集団間の関係、国家間の関係、非国家当事者間の関係、グローバリゼーションプロセスに根ざした関係によって生じる。紛争は「平和的」なこともあれば「暴力的」なこともある。したがって建設的なこともあれば破壊的なこともある。暴力の重要な特徴は、ヨハン・ガルトゥングが唱えた「構造的暴力」である。分析のレベル、紛争の種類が、私の現プロジェクトにおける2つの変数となる。

もうひとつの変数は「変化」である。変化には多くの種類があるが、私はもうひとつの変数としてさまざまな形態の「開発」(政治的、社会経済的、文化的)に焦点を当てる。

移行システムに関しては多くの文献がある。私は移行の一形態、すなわち独裁主義から民主主義への移行に焦点を当てる。具体的には、紛争後の社会における独裁主義から民主主義への移行という考え方を論じる。

検討すべき問題は以下のようになる。社会が深刻な紛争(暴力的紛争)を経験した後の「開発」はいくつかの道をたどる可能性がある。紛争後の社会が独裁主義から民主主義へ、国家統制経済から自由市場経済へ移行した場合は、どのような移行プロセスが見込まれるか? 「開発」は紛争を増やすのか減らすのか、それとも別の形態の紛争をもたらすのか? このプロセスは機能する市民社会を生み出す効果があるか? このプロセスは「建設的な」紛争をもたらすのか、それとも「破壊的な」紛争をもたらすのか?

研究上のもうひとつの重点は紛争転換である。上記プロセスが破壊的紛争をもたらした場合、どのようにしてその紛争を、将来的に紛争を減らす長期的変化へと転換させればよいか? 具体的には、移行システムにおいて紛争を減らすひとつの方法は、政治的・社会経済的エリートが「ノブレスオブリージュ」の原則に基づいて権限を行使することである。この政策は、移行システムで発生しがちな構造的暴力の原因を削減する。その反対は、政治的・社会的エリートが人民やルールを無視するケースである(この問題についてはソクラテスを参照されたい。2,000年以上前に論考がなされている)。

本研究では「寛容の限界」にも焦点を当てる。移行プロセスで生じた紛争が暴力化する(革命など)までに、大衆あるいは特定集団はどの程度の搾取に耐えられるのか?

最後に、過渡的社会における賄賂の役割は何か? 文献によれば、賄賂は世界の多くの地域、おそらくは特に過渡的なシステムにおいて見られるものである。賄賂は基本的に「開発」を妨げる悪事である、との共通認識がある。他方、エリートが利権をめぐって火花を散らす可能性を減じるという意味で、賄賂は「変化」に伴う問題を少なくとも一時的には改善するかもしれない。要するに、すべての人が分け前にあずかれば、それをめぐって争う必要が減るからだ。もちろん、このプロセスは膨大な構造的暴力を生み、利権システムに関与しない人がそのあおりを食う。このように搾取されている人たちの我慢の限界はどこか? どの時点で彼らは立ち上がり、暴力的紛争を起こすのか?

この最後の部分はタスクとして不可能かもしれない。限界の問題を研究できるようにするには、個人や集団レベルで(それにおそらく国家間レベルでも)変数が多すぎる。他方、およその所見が得られれば、本プロジェクトは学問的にも政策的にも意味を持つ可能性がある。紛争原因の研究は学問的な仕事であるが、平和の探求はそうではない。ピースワーカーは分析家であると同時に実践家でもある。寛容の限界のかなり正確な指標を見つけることができれば、自己防衛のためであっても、強欲な指導者がノブレスオブリージュに転じる助けになるだろう。