「持続可能な安全保障」の実現

クリストファー・クシン(ブラッドフォード大学平和研究学部、国際協力安全保障センター長、主席研究員)

この6年間、欧米の指導者たちは世界の安全保障に対する最大の脅威として国際テロに注目してきたが、この主張を裏付ける証拠はない。重要な研究によれば、長期的かつ基本的な脅威は相互に関連した4つのグローバルトレンドに由来する。

 (1) 気候変動

人々の移動、深刻な自然災害、食料不足が、さらなる移動、人的被害、社会不安につながる。

(2) 資源をめぐる争い

乏しくなる一方の資源をめぐる(特に世界の中でも不安定な地域からの)競争――石油をめぐる湾岸諸国からの競争など

(3) 周縁化と排除

政治的・社会経済的分裂の拡大、世界人口の大多数の周縁化と排除

(4) 世界的な軍事化

武力行使の増加、大量破壊兵器を含む軍事技術のさらなる拡大

これらの要因は、他のどんな脅威も及ばない世界的・地域的な不安定や大規模な人命損失につながる可能性がある。

こうした脅威に対する現在の対応は「コントロールパラダイム」として特徴付けられる。つまり軍事的手段によって現状を維持し、根本的原因に対処することなく不安定を制御しようとすることだ。したがって現在の安全保障政策は長い目で見れば自滅的である。新しいアプローチが求められる。

この新しいアプローチとは、多くの人々が「持続可能な安全保障」と呼ぶものである。「コントロールパラダイム」との大きな違いは、力の行使によって一方的に脅威をコントロール(「症状をたたく」)しようとはしない点である。むしろそれは、最も有効な手段を用いて脅威の根本的原因を協調的に解決する(「病気を治す」)ことをめざす。このアプローチこそが、世界規模の災害を回避し、テロの根本的原因に対応する最大の機会を提供してくれる。