自然会話の教材化の方法について  ― 動画データの収録・編集方法の実演 ―


東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程 井之川 睦美(英語)

Ⅰ.教材開発の流れ

1)

どんな教材を開発するのか?
  ・ だれが使うか?
・ どんな目的で使うか?
・ どのように使うか?(どこで)
   

〈例〉
→日本在住の留学生
→日常生活に必要な日本語を習得したい
→教室で使う教材

2) ニーズ調査
  ①目標言語使用領域・場面の特定 - アンケート・聞き取り調査
②言語使用実態調査 - 録画・録音・聞き取り調査
③録画・録音データ分析―学習項目(学習シラバス)抽出
3) 学習項目の検討・特定
4) アプローチ・教授法の検討
5) 教材全体構成・各課の構成の検討
6) 教材の仕上げ・教材のコンセプト等使い方のまとめ
   教師・学習者への注意書き
    ・ 教材の目的
・ 特徴
・ 対象とする学習者
・ 教材の使い方
     
Ⅱ.今回の自然会話素材の教材化の流れ

1)

収録場面の特定
2) 収録とフォローアップインタビュー
3) 文字化
4) 収録した自然会話から学習シラバスを抽出   
抽出するシラバスの検討(文法・機能・場面・話題・社会言語・文化等)
5) 教材の形態の決定
・ 素材加工の技術的可能性と限界(ハード面)
6) 教材使用の仮想枠を検討
7) 教材作成方法について
  <今回の教材開発例>
 





教材は、CD1枚、それに付随する補助教材、解説とする。
映像を加工(キャプションなど)する技術がないため、教材化部分の映像をそのままCDにして提出する。もし、ある程度の加工ができれば行うが、実験的なものとなる。
主に日本人向け教材としてデザインし、想定される教材使用者は、中学生~社会人とする。
教材は、学習者の母語が理解できる教師の指導の下に実施される授業において使用されるものとする。しかし、個人使用(自主学習)においても十分利用価値を持つ教材を目指す。
可能な限り、学習者、他の教師、母語話者の協力を求め意見を聞きながら作成する。
8) 教材の構成
<今回の教材開発例>
   
 






自然会話の映像(CD) ⇒ 3分~5分の一場面、もしくは短い場面二つに分ける
自然会話教材のコンセプト(教師への概説)
文字化資料(教師用、学習者用それぞれに整備したもの)
指導の手引き
学習の手引き
ワークシート (* ②~⑥は電子化と印刷されたものの両方を作成し、CDには 映像と②~⑥までの電子化資料が含まれる。)
     

◇◇ 具体的な作業

  教材化へのアイディアを探る。(既存のオーディオ、会話教材、教材開発関係資料) できれば、他の人から映像への意見を聞く 。
  各レベルのワークシートなどを含め教材(たたき台)を作成する。
・ テンプレート(学習項目)、ワークシートの見直しをする。
・ 文字化資料を見直し、学習者用、指導者用へ整備する。
・ 自然会話教材のねらい、教師向け指導案、学習者への手引書を作成する。
  模擬レッスン(20~30分)を行い(または行ってもらい)、レッスン後、 教材と模擬レッスンについての感想と助言をもらう。
  3、で行った模擬レッスンの結果を受けて2、で作成した教材全ての見直しをする。
  再度、模擬レッスンを行ってもらい、問題点を探る。 できれば教材と指導手引書を使って模擬レッスンを行ってもらう。 依頼できない場合は自分で行う。
  仕上げをする。
   

 

III. 試作版「英語自然会話教材」の全体構成

◆教材内容 *は指導者用のみ

  ここからスタート!
  学習者はここからスタート!:学習の手引き
  始める前に(教材について)
  自然会話教材とは?
  指導の手引き*
  学習シラバス*

やってみよう: ワークシート1~5

語彙・表現

ワークシート1~5 ヒント
ワークシート1~5 ヒントとポイント*

シーン1 スクリプト
シーン2 スクリプト
シーン3 スクリプト
シーン2前までのスクリプト
シーン3前までのスクリプト

文字化資料
文字化資料
文字化のルール(BTSJ参考)

映像: Scene 1
映像: Scene 2
映像: Scene 3

   

参考文献*