自然会話コーパスの分析から得られる会話教材作成の視点

The viewpoint of developing conversation teaching materials:
from the analysis of natural conversation corpus


Presenter: 木林 理恵

本発表では、言語運用に基づく自然会話コーパスの作成過程を紹介し、そのデータを利用した自然会話分析の結果から、自然会話を日本語教育に生かすための視点を探る。

そのため、自然会話と創作会話の特徴を比較・分析することを目的として作成された『BTSによる多言語話し言葉コーパス- 日本語2』(東京外国語大学21世紀COEプログラム「言語運用を基盤とする言語情報学拠点」言語教育学班談話グループ)を取り上げる。これは、「挨拶する」「依頼する」などの言語行動の機能に該当する部分を様々な自然会話資料から抽出しまとめるという形態のコーパスである。

各機能に該当する談話を自然会話から抽出するために、機能の定義と、機能に典型的と思われる言語形式が設定されている。例えば「希望を述べる」という機能の定義は、「話し手が何らかの希望を表明する発話」であり、その機能に典型的な言語形式は、「~たい/~ほしい」とされている。 このコーパス作成のプロセスや分析を通して、自然会話においてある機能が果たされるには、話者同士の相互作用や会話の流れが重要であることが分かった。例えば、話者は希望を述べていても「~たい/~ほしい」という言語形式が現れていなかったり、反対に、その言語形式が現れても希望を述べているのではなかったりする場合がある。

このような現象について具体例を検討し、自然会話コーパスの作成・分析によって得られる視点を会話教材作成に生かすには、どのようなことを考慮する必要があるかを考察する。また、会話教材作成のためには、実際の言語運用に基づいたコーパス作成が必要であり、その作成過程から重要な視点が得られるということを述べる。