自然会話分析と日本語教育
  ―自然会話の特徴を生かした会話教材開発の展開の可能性-

Natural conversation analysis and Japanese language teaching:
Possibilities of developing conversation teaching materials
which incorporate features of natural conversation


Organizer & Chair:  宇佐美まゆみ
Discussant: 宇佐美まゆみ・荒川友幸

本パネルでは、自然会話分析が日本語教育、特に会話教育にどのように貢献できるか、という観点からの発表者らによるこれまでの取り組みを紹介し、自然会話の特徴を生かした教材作成に関する提案を行う。

発表1では、話し言葉の文字化システムを開発する際の問題を整理した上で、「人間同士の相互作用」としての自然会話分析に適した「基本的な文字化の原則 (Basic Transcription System for Japanese: BTSJ)」をとりあげ、このシステムが自然会話の教材化に際して有効である点を論じる。

発表2では、自然会話コーパスを構築するプロセスとコーパスを用いた分析例を示し、自然会話コーパスの実証的分析から得られる結果を会話教育にどのように活用できるか考察する。学習者が目標言語で自然なコミュニケーションを実現するためには、会話は話者同士の双方向的なやりとりであるという側面を学習者に気づかせる必要がある。そのためには、まず、実証的な研究によって自然会話の特徴を明らかにする必要がある。スキットのような人工的に作られた「会話」ではなく、実際の「自然会話」そのものを利用した教材を、早い段階から、授業や自習活動の中に組み込んでいく必要があるということを論じる。

発表3では、実際の自然会話における談話レベルのポライトネス・ストラテジーに関する研究結果に基づき、そこで見出された知見が、いかに今後の会話教材の開発に生かせるかについて考察する。

発表後のディスカッションでは、自然会話分析を生かした教材を開発していくことによって、将来的にどのような会話教育が可能になっていくかという点を中心に論じる。