朝鮮語
野間 秀樹
1.概説 2.発音と文字 3.語彙  4.文法 5.朝鮮語を学ぶために 6.朝鮮語情報


6 朝鮮語情報

1)人名について

 人名は<姓+名>の順になる。姓氏の数は日本と比べて非常に少なく、1987年の韓国の調査では274姓しかない。姓はすべて漢字語で、ハングルのみならず漢字でも表記することができる。「金」[キム]や「李」[イー]のように一字からなる姓がほとんどで、「南宮」[ナムグン]や「皇甫」[ファンボ]といった二字姓は数えるほどしかない。最も人口の多い「金」「李」「朴」[パク]の三姓だけで韓国の総人口の45%を占めている。

 また姓氏の発祥地とされる地名にちなむ<本貫>[ポングワン]というものがあり、姓氏をさらに細分している。この本貫を用いて例えば「金海」[キムヘ]という地から出た金氏を「金海金氏」[キムヘキムシ]のように称する。韓国では戸籍にも本貫が記されている。1987年の時点では本貫の総数は3435種があった。本貫別で最も多いのは金海金氏で韓国の総人口の9.3%を占める。本貫の数が多い姓は金氏で285種を数える。同じ姓で同じ本貫、つまり同姓同本は、広い意味での血族と考えられていて、この同姓同本の男女間では結婚はしない。

 なお、結婚しても男女とも姓名は変わらないが、子供は男の方の姓を名乗る。

 名のほうも普通は漢字語である。漢字二字の名が多いが、一字の名もある。 同姓同本の間で、始祖から何代目に当たるかを示すのに行列字[ハンニョルチャ]もしくは돌림자[トルリムチャ]という漢字を用いて名を付けることがしばしば行なわれる。例えば兄弟やいとこに皆同じ「煥」という漢字を用いて昌煥・斗煥・翊煥・・・のように名を付けるのである。「煥」の字なら火偏であるから火、その次の世代には土の字の入った「基」という字を用いるという具合に、木・火・土・金・水という五行思想に裏打ちされていることが多い。トルリムチャを見れば代の上下関係がわかるわけである。現在ではこれを用いないで名を付けることも多い。

 個人の名を言うときや紹介などには男女共に「...さん」にあたる、씨<氏>[?ci シ]を用いることができる。ただし씨の前に姓だけを用いて<金氏>や<李氏>のように言うのは非常に失礼で、必ずフルネームを用いて、<金民植氏>[キムミンシクシ]のように言う。なお선생님<先生->[ソンセンニム]などの敬称や称号などをつけて言う場合には金선생님[キムソンセンニム]や朴社長님[パクサジャンニム]のように姓に直接付けても言う。

2)挨拶から

 「こんにちは」「おはようございます」「こんばんは」はいずれも「안녕하십니까?」[アンニョンハシムニッカ]でよい。「お元気ですか」の意なので家庭内では使わない。同じ意味だが,柔らかい文体の「안녕하세요?」[アンニョンハセヨ]もよく用いられる.「さようなら」には「お元気でお行きください」の意の「안녕히 가십시오.」[アンニョンヒ カシプショ]と、「お元気でいてください」の意の「안녕히 계십시오.」[アンニョンヒ ケーシプショ]の2種を使い分ける。

前者は「안녕히 가세요.」[アンニョンヒ カセヨ],後者は「안녕히 계세요.」[アンニョンヒ ケーセヨ]という柔らかい文体の表現も多用される.「ありがとうございます」は「감사합니다.」[カームサハムニダ]や「고맙습니다.」[コーマプスムニダ]という.「どういたしまして」は「천만의 말씀입니다.」[チョンマネ マールスミムニダ]という.

3)数詞

 数詞には固有語数詞と漢字語数詞がある。日本語では固有語数詞は1つから10までしかないが、朝鮮語では1つから99まで数え得る。10進法である。体言を飾る連体形と通常の基本形とで形が異なる数もある。( )内が連体形:
 
하나
(한)
ハナ
(ハン)
1つ

(두)
トゥール
(トゥー)
2つ

(세)
セーッ
(セー)
3つ

(네)
ネーッ
(ネー)
4つ
다섯

タソッ

5つ
여섯

ヨソッ

6つ
일곱

イルゴプ

7つ
여덟

ヨドル

8つ
아홉

アホプ

9つ


ヨール

とお
열하나(열한)
ヨールハナ(ヨールハン)
11
스물(스무)
スムル(スム)
20
아흔아홉
アフナホプ
99

イル

イー

サム

サー

オー

ユク

チル

パル



シプ
십일
シビル
十一

ペク
만  천  이백   삼십칠
 [マーン チョン イーベク サムシプチル]
  一万一千二百三十七

固有語数詞と漢字語数詞は役割分担が決まっている。例えば時刻を表すのには<固有語+時 漢字語+分>の構成をとる:
 한  시 이십구 분  [ハン シ イーシプク ブン]  1時29分 


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