インドネシア語
Bahasa Indonesia
(英:Indonesian)
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学習機関
話者人口
Summer Institute of Linguistics:
Ethnologue
(13th ed.) は、母語としてのインドネシア語話者は17,000,000人から30,000,000人、第二言語としてのインドネシア語話者は140,000,000人以上という数字を挙げている。
インドネシア語の話者人口を特定するのは非常に困難である。これは、インドネシア語もしくは類似のムラユ語の変種の母語話者が2億人以上の人口を抱えるインドネシアのおよそ1割であり、他言語を母語とする残り約9割の人々が基本的にインドネシア語を国内の共通語として用いているという複雑な言語事情によるためである。
言語をめぐる歴史
古来よりインドネシア地域ではムラユ語が交易用語として用いられ、広く行き渡っていた。このムラユ語がインドネシア語の起源である。
20世紀初頭以来、当時の蘭領東インドで民族主義運動が活発化し、1928年の「第2回インドネシア青年会議」の場において『青年の誓い』が採択・承認された。その一つに「統一言語インドネシア語を遵奉する」という文言があり、これが「インドネシア語」という名称が公式に用いられるようになった出発点である。
第二次世界大戦後、インドネシア共和国として独立し「インドネシア語」が国語となった。『多様性の統一』をモットーに掲げるインドネシアでは、各地域の母語としての地方語と、共通言語として用いられているインドネシア語が共存している。
言語に関する状況
インドネシア国内には数百に及ぶ地方語が存在する。Summer Institute of Linguistics:
Ethnologue
(13th ed.) では、用いられている主な国を「インドネシア」とする言語を719挙げている。
これらの地方語のうち最大の話者人口を持つのはジャワ語で、インドネシアの人口の約4割に達する。以下スンダ語、インドネシア語、マドゥラ語、ミナンカバウ語、バリ語......と続いている。
教育・行政など公式な場面にはインドネシア語が用いられる。地方語は各自の地域に根付いた生活言語であり、その上にインドネシア共和国という国家の枠組の中でインドネシア語という共通語が覆い被さっている状況であると言えよう。
文字と音声
1.文字
インドネシア語の表記には、ラテン文字を用いる。正書法では補助記号を用いることはない。
は
と
の2音を表すため、両者を区別するために学習書や辞書で
を
と表記することがあるのみである。
2.音声
(1)母音
インドネシア語には、以下の6つの単母音がある(左側は正書法として用いる文字を示す:以下同様)。なお、母音の長短によって意味を区別することはない。
この他、以下の3つの二重母音がある。いずれも開音節にのみ現れる。
(2)子音
インドネシア語には以下の22の子音がある。このうち5つは外来語にのみ現れる。
無声閉鎖音([p] , [t] , [k])は一般的に語末では破裂を伴わず閉鎖のみの発音となるため、日本人にとっては語がこれらの音で終わるか終わらないか、あるいはどの子音で終わるかを聞き分けるのが困難となる。
(3)アクセントとイントネーション
アクセントは語義の区別に関与しない。一般的に、終わりから2音節目にアクセントが置かれることが多いが、各自の母語の影響や感情、文における語の位置によって変わってくる。
イントネーションは、文の構造を示す上で非常に重要な役割を担う。例えば「私は日本人です」という文は「私(saya)」と「日本人(orang Jepang)」の2つの要素のみで言い表すが、イントネーションの型によって文を形成する。
言語の構造と特徴
1.句内の語順
2語以上で句を形成する場合、その語順は「被修飾語-修飾語」となる。
bahasa
Indonesia
「インドネシア語」
言語
インドネシア
nama
saya
「私の名前」
名前
私
ただし、数量を表す語は被修飾語よりも前に述べる。
tiga
orang
「3人」
3
人
banyak
tamu
「多くの客」
多い
客
2.文の構造
文の基本的な構造は[主部]-[述部]。
[述部]は名詞句・動詞句・形容詞句・前置詞句などを取る。[述部]に名詞句を取る文をしばしば「名詞文」と呼ぶことがある。否定文では、名詞文はそれ以外とは異なる否定語を用いる(名詞文では
bukan
、それ以外の文では
tidak
)。
主部
(否定語)
述部
Saya
(bukan)
orang Jepang.
「私は日本人だ(日本人ではない)」
私
人 日本
Saya
(tidak)
pergi.
「私は行く(行かない)」
私
行く
Saya
(tidak)
tinggi.
「私は背が高い(高くない)」
私
高い
Saya
(tidak)
membaca buku.
「私は本を読む(読まない)」
私
読む 本
Saya
(tidak)
di sini.
「私はここにいる(いない)」
私
~に ここ
3.言語の特徴
語彙に関する最も大きな特徴は、接辞(接頭辞・接尾辞)や重複による派生語が豊富に作られることである。jalan(道)を基語とする派生語の例を以下に示す。
jalan-jalan
「道」(複数)
berjalan
「動く、進む」
berjalan-jalan
「散歩する」
pejalan kaki
「歩行者」(kaki「足」)
perjalanan
「旅行」
sejalan
「同じ方法」
menjalani operasi
「手術を受ける」(operasi「手術」)
menjalankan tugas
「業務を行う」(tugas「業務」)