中国語

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中国語の基本情報

0.1 言語の名称

中国語,汉语(Hànyǔ),Chinese

 多民族国家である中国では系統を同じくする,或いは系統を異にする多数の言語が話されているが,主要には最大多数を占める漢民族の言語が用いられる。中国語で“汉语”(漢語)とは正に「漢民族の言語」を意味する。一方,広大な面積を持つ中国において,同じく“汉语”と称してはいても,その内部には多くの方言が含まれており,また諸方言間の差異も大きい。方言の違いによっては口頭での会話が全く不可能な場合すらある。ヨーロッパであれば優に2桁の「国語」に匹敵する方言がある。

 しかし漢民族自身は自らの言語が複数の異なる言語から成っているとは思わないであろう。長い歴史を通じて共通の文化基盤(とりわけ共通の文字言語)を有する彼らにとって,それはあくまで方言の違いに過ぎず,やはり同じ「漢語」なのである。

 とはいえ,実際のコミュニケーションのためには国家としての(或いは民族としての)共通語が必要なことは言うまでもない。現在中国では北方方言を基礎とする共通語が公用語として定められており,“普通话(Pǔtōnghuà)”(普通話,「遍く通ずる言葉」の意)と称する。台湾やシンガポールで公用語として用いられる中国語も同様である。(台湾では“國語(Guóyǔ)”,シンガポールでは“华语(Huáyǔ)”と称する。)国連の公用語としての中国語もこの“普通话”である。

0.2 使用文字

0.2.1 漢字

 中国語の表記に用いられる文字は漢字であることは言うまでもないが,日本の常用漢字やいわゆる旧字体ではなく,日本で俗に「簡体字」と呼び習わされている字体が用いられる。《中华人民共和国国家通用语言文字法》では国の定める“规范汉字”(規範漢字)を正式の文字としている。漢字の字体の統一は長い中国の歴史の中で常に問題になっていたが,中華人民共和国成立以後,「字体の簡略化」,「異体字の整理」,「標準字形の制定」という3点を中心に進められてきた。字体の簡略化により「愛」が“爱”となり,異体字の整理により「涙,泪」の内“泪”が採用され,標準字形の制定により“差”は9画であって10画(「差」)ではないことが規定された。現在は《现代汉语通用字表》に収められる7000字を“规范汉字”と考えることができる。

0.2.2 表音ローマ字

 漢字とは別に,中国語の表音文字システムとして,日本で俗に「ピンイン」と呼び習わされている《汉语拼音方案》が制定されている。これは中国語の発音をラテン字母(但し“V”は用いられず,“ü”が加わえられている)及び声調を表す符号の組み合わせで表記するローマ字のシステムである。またローマ字表記に不可欠である分ち書きの規則も別に定められている。

 かつては漢字を廃してこの表音ローマ字システムで中国語を表記しようとする考えも見られたが,現在《中华人民共和国国家通用语言文字法》では「中国の人名・地名・文献名をラテン字母で表記する際の規範であり,漢字を使用できない,或いは使用し難い」場合に用いるということと,「初等教育で教授する」ことが定められているにすぎない。