相澤啓一:「日独会議通訳入門」 (欧米第一地域言語論.受講指定:ドイツ語専攻)
授業の目標
通訳とはどういう仕事なのか理解を深めつつ、総合的テクスト能力としてのドイツ語力および母語(日本語)能力を高めることを目標とします。あくまで「通訳入門」に過ぎませんが、「通訳」という作業にいかなる知的能力が求められているのかを体験することによって、今後のドイツ語の勉強法にも実践的視点を取りいれられるようになることが目標となります。
教材・参考書等
翻訳・通訳練習として実際に使用する教材は、事前にプリントを用意し、また当日配布します。参考書としては、月刊誌『言語』(大修館書店)1997年8月号(特集「通訳の科学」)を参照しておいてください。
成績評価の方法
全7日間を通しての出席を前提とします。前期のみ、また後期のみの出席はできません。出席・平常点、および最終日に行う予定の模擬通訳におけるパフォーマンスによって総合評価します。いわゆる筆記試験は行いません。
受講上の注意
二期に分けた集中授業という形態で、前半は9月27,28,29日後半は12月20,21,25,26日の、計7日間で30コマ分の授業を行います。(したがって当日は、一日当たり4〜5コマ連続の授業となります。)ドイツ語の授業ではなく、職業としての日独会議通訳の実際を知り、シミュレートするための通訳入門授業ですから、独検二級程度のドイツ語力を前提とします。万一参加希望者数が20名を超える場合は、事前の早い時期に選抜試験を行います。また参加予定者には、事前に予習準備しておいてもらうテクストを配布しますので、ドイツ語専攻のホームページhttp://www-fs.tufs.ac.jp/~narita/d_frame.htmや掲示等に注意して下さい。
授業の内容・計画
通訳とは、言語に関する高い専門性を持つ職業です。中でも会議通訳は、さまざまな通訳形態のなかでも最も要求水準の高いもので、さまざまな知的能力を要求されます。東京外語大という「外国語に関するプロの大学」からこそ優れた通訳者が育って欲しいという要望は、ドイツ語関係者の中に強くあります。信頼できる日独会議通訳者の数は国内に約10名程しかいない小さな市場であるのも事実です。実際に通訳者になるには、ドイツ語圏での長期滞在体験を含め、極めて高いドイツ語能力と、(実は驚くほど個人差のある)母語の能力、さらには論理的思考力やさまざまな専門分野に関するリサーチ能力等、「単なる語学力」をはるかに超える総合的テクスト能力が必要になります。だから本来なら通訳者養成教育は大学院以降にこそふさわしいもので、プロの通訳となるには、独検一級程度の人の場合で、おそらくさらに4〜5年に亘って訓練を受けることが必要となります。しかしこの授業では、そうした将来の可能性を視野に入れてもらうための入門として、まずは通訳の世界がいかなるものなのかに接してもらい、実際に会議通訳を体験してもらうことを目標とします。そこで知ることになる実践的なドイツ語との接し方は、たとえ通訳をめざさない場合でも、今後さまざまに応用できることと思います。具体的には、さまざまな通訳の練習法、例えばシャドーイング、サイトトランスレーション、記憶力の養成、メモ技術などを紹介し、実際にそれを練習してみます。また事前にテクストを予習・翻訳してきてもらい、実践的な翻訳の仕方も考えた上で、それをもとに逐次通訳および同時通訳などを練習します。最終日には会議のシミュレーションを行います。短期集中の授業なので、他の予定をほとんど入れられなくなる7日間というのは(特にクリスマスをはさむ後半に関して)かなりつらいものがあると思いますが、合宿ゼミに匹敵する集中的訓練によってドイツ語に関する新たな世界が開けることを目指したいと思います。

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