○トルコ語専攻の歴史
1992(平成4)年、ペルシア語科内にトルコ語専攻が設けられ、同時に中央アジア近現代史を専門とする小松久男が東海大学から着任し、ペルシア語学科一年次在学生のうち八名が、主専攻語としてトルコ語を学び始めた。
翌93年には、ペルシア語学科とアラビア語学科が合同して、中東学科となり、トルコ語もこのニ言語と並んで、同学科を形成する柱の一つとなった。この時以来、トルコ語専攻の一学年の学生数は、一貫して十五名である。また同年、オスマン帝国史を専攻する林佳世子が着任し、専任教官が二名となった。
続いて1995年、大講座制への改組に伴い、トルコ語も南・西アジア課程を構成する一専攻語となった。この年に、チャガタイ語を専攻とする菅原睦が、言語情報講座に着任した。同時に、東京大学に転出した小松に代わって、トルコ近現代史専攻の新井政美が地域国際講座に着任、同じく地域国際講座に配属された林と合わせて、専任教官三名の体制が整った。またこの年、初めて卒論指導が行われ、翌96年に最初の卒業生が巣立っていった。なお、新井政美は西欧におけるオスマン人留学生の活動、地方分権論的国民主義思想の研究を課題としており、『トルコ近現代史』(みすず書房)をはじめ、多くの専門に関わる著書・論文のほかに、翻訳書として、『トルコ音楽にみる伝統と近代』(東海大学出版会)がある。
さらに、1997年には念願の外国人教師が配置され、同年10月、イスタンブルのボアジチ大学から、トルコ古典文学専攻のハティージェ・アイヌール(Hatice Aynur)が、客員教官として着任した。また同年、アンカラ大学との間に大学間交流協定が締結され、文部省奨学金を得た最初の留学生が、一年間の留学に旅立った。
1998年にはアイヌールの後任として、アンカラのハジェテッペ大学から、古代トルコ語専攻のメフメット・オルメズ(Mehmet Ölmez)が客員教官として来日した。さらに、ボアジチ大学との間にも大学間交流協定が締結され、教育・研究体制が着々と整備された。
客員教官を2年間つとめたオルメズの後任には、ドイツ・ベルリン出身のトルコ語研究者、ギュルカン・オナルが、エリフ・ディルマチ夫人とともに来日し、同じく2年間、トルコ語専攻での教育・研究に貢献した。その後、2002年10月から2004年9月は、イスタンブル・ユルドゥズ工科大のバフリエ・チェリ(トルコ近代文学)、2004年10月から2006年3月は、セルチュク・イシセヴェル(言語学)が客員教官を務めた。2006年4月からは、エミネ・シェンドゥラン(トルコ語教育)が後任に就いている。
(東京外国語大学史編纂委員会編『東京外国語大学史』、1999年、1121-1123頁より。一部、加筆・訂正あり。)
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