イラン通信vol.1
私は現在、学部を休学して、10ヶ月の予定でテヘランに留学に来ている。留学を考えている人にとって、何かの役に立てたらとおもい、この滞在記を書くことにした。
一口に留学といっても、さまざまな出来事があり、その全てを一度に語ることはできないから、第一弾として、恐らく多くの人が通うことになるであろう、デホダー語学学校(正式名称;International Center for Persian Studies)の様子を紹介することにしよう。
細かいシステムは、同語学学校のHP(http://icps.ut.ac.ir/en/index.htm)を参照してもらうとして、仕組みを簡単に紹介する。クラスは午前の部(9時~12時)と午後の部(15時~17時半)の2つがあり、前者は木金を除く毎日で1ターム6週間、後者は土・月・水の週3回でこちらは1ターム12週間約3ヶ月続く。
午前の部にはクラスが6つあり、初級・中級・上級にそれぞれ上下がある。午後のクラスは中級のみ上下に分かれていて、計4つのクラスがある。さらに上級を終了すると、文学のコースをとることが出来るし、そうでなくとも受講者が集まれば、ハーフェズを読むクラスや、作文に特化したクラス、またイラン習字のクラスなども開講される。
私はそのうち、午前の中級の上のクラスと、上級の下のクラスに通っていた。そして現在は、午後の上級クラスに通っている。
クラスのレベルはと言えば、午前の中級の下のクラスは、文法がほとんどの時間を占めるため、日本でしっかりと文法を勉強した人には、少し退屈に感じるかも知れない。また、クラスメートのレベルも、文字を扱うのが一苦労というところからスタートする人が多いため、午前のクラスから通うつもりであれば、中級の上のクラスからスタートすることを薦める。中級の上のクラスは、会話が7割、文法3割といったところ。上級の下のクラスでは、簡単な新聞記事が宿題として出され、ラジオのリスニングもある。一方午後のクラスというと、中級の下のクラスでも、喋る訓練がかなりあると聞いており、そこから始めるのもいいかもしれない。当たり前だが、どのレベルのクラスでも授業は9割ペルシア語で行われる。何も心配はいらない。テレビのアナウンサーよりはっきり話してくれるし、分からなければ何度も繰り返して説明してくれる。
授業の質は、クラスの講師に左右される。私が出会った講師の方々は、例外なく言語学の一分野で博士号を取得しており、それほど質に幅があるわけではない。一貫していえることは、とにかく喋らされること。順番に当てられることもあれば、言いたい人からいうという場合もある。最初のうちは恥ずかしいが、とにかく話して慣れてしまうことが大事だと思われる。私はいつも受けを狙っていた。
クラスメートの国籍、バックグラウンドは様々である。イラン人配偶者を持つ人、各国大使館職員の配偶者、他国で生まれ育った二世から、イランで働く企業人もいる。私の印象では、学部生・大学院生は他と比べてあまり多くないようにおもう。クラスの人数は多くてせいぜい20人弱なため、最初は名前を覚えるので精一杯だったのが、最後にはまるで何年も一緒に勉強したかのように冗談を言い合い、連絡先を交換し合ったりするようになる。たとえば私の通ったクラスは、やたら詩的な例文を作り、感動を誘おうとするインド人大使館員や、アラビア語の単語を並べるだけ並べて、動詞を忘れるパレスチナ人男性、また、挙手するものの、なかなか当ててもらえないボスニア人大学院生など、一期一会だけでとどめてしまうのはもったいない、愛すべきクラスメートばかりであった。ペルシア語だけではなく、クラスメートからも多くのものを学べるのも、語学学校ならではの醍醐味かもしれない。
(水谷陣也)