WindowsXP日本語版におけるペルシア語入力上の問題点

 WindowsXP日本語版では、簡単な設定変更でペルシア語の文字列を扱うことができるようになりました。ほんの数年前までは、ペルシア語を入力する環境自体に多くの制限があり、日本語との混在を考えるとMacintoshしか選択の余地がありませんでした。こうした多言語利用問題が解決に至ったのは、OSやフォント、アプリケーションソフトがユニコード(Unicode)に対応したためです。

 WindowsXPとMS-Officeがユニコードに対応し、ペルシア語も入力できるようになったのですが、不満点も残っています。最もフラストレーションを感じるのは、he(ه)の文字の上にハムザ(ء)が表示できないことです。
 その原因は、単純明快でフォントに当該文字が存在しないことと、フォントに存在しないがゆえにキーボードの割り当てもないことです。では、ユニコードの欠陥かと言えば、そうではなく、http://www.unicode.org/charts/PDF/U0600.pdfのコード表には、0654ときちんと割り当てられていることが分ります。






 スクリーンキーボードでshiftキーを押した状態が下段のものですが、うすく赤で囲んだ部分にhe+hamzahのような文字があることが分ります。しかし、この文字は、ほとんど何の役にも立ちません。入力してみれば分りますが、前の文字と結合もしなければ、文字の形も全くバランスを欠くものとなります。
 すべてのPCで起こるとは限りませんが参考までに、「スクリーンキーボード」にはバグがあるようで、Wordと併用して使用し続けていると、深刻なアプリケーションエラーが発生する危険性があります。この状態に陥ると、強制的に再起動されます。Wordでペルシア語文字列を入力する際は、なるべくスクリーンキーボードの使用は避けたほうが無難です。

 この他、ミニチュア・アリフ(ペルシア語ではアレフ)つまり、アッラー الله のLam部分上についている小さなアリフですが、これもアッラー以外で表示することができません。(アッラーではal-lahと入力すると、自動的にこの形式に変換されます。)
 あまり必要がないと言えばないのですが、アリフ・マクスーラ(アラビア語で点なしyeをaの長母音で発音させる)に発音符号が付けられないのは、不満が残ります。(分りやすい例では、 حتی (「〜でさえも」の意)の語尾のyeが、これにあたります。)


文字サンプル

以上述べたとおり、キーボードからはheの上にハムザは打てないので対処は次のようにするしかありません。
1.入力しない。(下のサンプルは、Times New Romanのもの)

خانه شما کجا است؟

2.Symplified ArabicやArial Unicode MSフォントを利用し、文字コード表から0674(0654は、任意の文字の上につきますが、0674は、単独で表示されます)の文字を入力します。Wordの場合は、ショートカットキーを設定することができますが、Excelには設定機能がないので、実用的ではありません。

Symplified Arabic: このフォントの場合、明らかに一文字分ずれて表示されています。
خانهٴ شما کجا است؟

Arial Unicode MS: こちらを使用すると、ずれはないものの、字形が丸すぎてTimes系フォントとの相性はあまり良くありません。
خانهٴ شما کجا است؟

3.yeで代用する。この方法は、ファルハンゲスターン(イラン・アカデミー)推奨の正書法でもあります。定着しているとは思えませんが...。

خانه ی شما کجا است؟



参考までに、上で述べたhe+hamzahのような文字を入力すると以下のようになります。

خانۀ شما کجا است؟

he+hamzahだけ文字の形が異なって見えるのは、フォントが異なるためです。無理やりTimes New Romanを指定すると(Wordではできません)下のように文字が抜けてしまいます。(ウィンドウズXPのSP2以降、Times New Romanでも正しく表示できるようになりました。)

خانۀ شما کجا است؟

このhe+hamzahは、WordではTahomaというフォントが指定されています。すべてをこのフォントに置き換えると、次のようになります。

خانۀ شما کجا است؟

このフォントに指定しても、文字の結合は正しく行われません。結局、何の役にも立たないことが分ります。


 MacintoshOS9には、これらの問題はありませんでした(ただしユニコードでなくAsciiコードを利用、ブラウザーへの汎用性はありません)。ユニコードに対応したOSX以降も基本的には、同じはずですが、日本語入力ができるソフトがアラビア語系文字列のユニコードに正しく対応できていないため、実用水準に達していません。マック用のOfficeは、Word、Excelともアラビア文字を正しく処理できません。
 なお、印刷物として、この問題にきちんと対応したいというのであれば、現状ではArabTeXもしくはFarsiTeX(こちらは開発途上のようですが)を利用するしかありません。