イラン便り
〜留学中のペルシア語専攻生によるイランレポート〜


こんにちは。学部3年の永田彩香です。テヘラン大学付属語学学校(通称ロガトナーメ)に2009年2月から留学中です。留学中随時、イランでの日々をみなさまにお伝えしていくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

記念すべき第1回目の「イラン便り」は、今最もホットな、大統領選挙についてのレポートです。 12日に投票が行われた第10回大統領選挙は、現職続投という形で幕を閉じました。今回は選挙期間中の首都テヘランの様子をお伝えします。

日本でも報道されたように、今回の選挙は現職アフマディネジャード氏とムーサヴィー氏の一騎打ちという感じでした。町中に候補者のポスター。どこへ行っても選挙の話題で持ちきり。国民の政治への関心の高さには驚きました。

中でも印象的だったのは、後者の候補者たちの選挙活動。町は彼のシンボルカラー、緑色のリボンやルーサリー(スカーフの一種)の人々であふれ、昼夜問わずデモや集会が行われ、道路はどこも大渋滞。連日、選挙とは思えない異様なまでの盛り上がり。まるでワールドカップや韓流ブームの頃の中高年女性の熱気や、リオのカーニバルのようなお祭り騒ぎ。日本の学生紛争の頃や、30年前のイラン革命時はこんな感じだったのかな…。

またテレビの他、ネットやメールが選挙戦の重要なツールになっている点も、今の時代の選挙だなあと感じました。

子供からお年寄りまで、こんなにも国の未来を真剣に考えているのかと驚きました。一方で、外国人の私から見た選挙は、一部の若者たちにとっては憂さ晴らし、最先端の「ファッション」。デモに参加し、車をペイントし、緑の服を着て騒ぐことが最先端の流行、かっこいいファッション。もしくはサッカーの試合のようにはらはらどきどきのイベント、そんな印象も受けました。

色々な人に話を聞く中で感じたのは、イランは「変革」を求めていること。何か今転換期にきているような、発散しきれないエネルギーが町中にあふれているような。changeを求めたアメリカとどこかかぶる。

表現の仕方や行き過ぎたお祭り騒ぎは別にして、人々の「自分たちの行動や一票で社会を変えたい」というどこか祈りにも似た強い意志、力を感じました。自分が「生きているひとつの歴史」の渦の中にいる、どきどき、不思議な感じ。

前日はすべての選挙活動が禁止され、まさに嵐の前の静けさ。選挙当日、投票所には長蛇の列。選挙結果が出たのは13日未明。人々の反応は様々です。

最後に、偶然町で出会った女性の言葉。
「政治にお手本はない。何が正しいか、これからどうなるかなんて誰にもわからないのよ…。」

様々な問題を抱えるイランが、これからどのように変わってくのか。もしかしたら何も変わらないかもしれないし、もっと悪くなるかもしれない。でも、変えたい、自分たちならできる、そう信じているイランの人々がいるから、いい方向に向いてほしいと願ってやみません。

アフマディネジャード大統領の選挙ポスター
再選を果たしたアフマディネジャード大統領の選挙ポスター。
「私たちはできる!」のスローガンが書かれている。