3.留学を終えて

 初めて寮に入った日、夜ルームメイト達と手をつないでショッピングに出かけた時を思い出します。サヴァーリーから降りたとたん、なんだか急に今までの「イラン」が変わって、外から見ていた自分がイランの中に入り込んでしまったような気がしました。私の留学の利点はそこにあったと思います。「今まで外から見ていたイランが変わる」―旅行では決して見ることができなかったイランの素顔、特に女性の暮らしや価値観に触れられたことは本当に貴重でした。

また自分の「自己認識」の甘さも痛感した1年間でした。友達がイランの文化や宗教、そしてそれについての自分の考え方を一生懸命話してくれ、それに対して私も自分のことを話したいと思うのに話せない、ということが多々ありました。言葉が分からないのではなく、自分が生まれ育った国についての情報が少なく、宗教やほかの問題についても、自分はどうなのかと深く考えてこなかったことが原因です。留学前にこれに気づいていればもっとうまく自分を表現し、いきいきとしたコミュニケーションを図れたのではと後悔しています。 良いところばかりではなく、「イラン」という国の矛盾もたくさん見えた留学でした。そして良い面、悪い面の両方を受け入れ、「その国を知りたい」という強い関心と敬意を持ってこそ、相手も安心して心を開き、自分を受け入れてくれることを、身をもって体験しました。これからもより多くの学生がこのイスラームの国でたくさんの人と触れ合い、揉みくちゃにされながら、様々な体験や発見をしてほしいと思います。

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