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高野洋子さん(2003年9月卒業)



                                    
                            (著者は右端)


*日建設計勤務。


ほんの数十年前は全くの砂漠と漁村だったUAEのドバイが、昨今の不動産開発・投資ブームに乗ってビルの建設ラッシュが続いています。アッラーをも恐れない(?)世界一高いタワーの建設競争、海岸線を完全に変えてしまうほどの埋め立てリゾート開発、一方で全市民の90%の外国人、主にインドやパキスタンからの労働者によってそのブームが支えられているという状況は、インド経済の向上を受けて帰国する人が増加、これから徐々に様変わりをしていきそうです。

昨年4月から日本の設計会社でドバイや他の中東の案件を担当しています。それまではアラブとは全く関係ない仕事を転々としていましたが、これもナイル川の水を飲んだからでしょう、アラブの世界に戻ってきました。所属の部署では顧客との契約交渉・折衝、現地業者とのやりとりなどを担当しています(まだまだ見習いですが)。また昨年は弊社を含め日本企業11社でアブダビとドバイで日本の環境技術を紹介するイベントを開催、その業務で2ヶ月半ほどドバイに滞在しました。

 ここにきて在学中にあまり勉強しなかったのが悔やまれます。アラビア語はもとより、その背景になる文化や慣習、発想の仕方等の全てが、先方の考え方や交渉の戦略を知るために重要なものだからです。値段の出し方や契約の条項の入れ方、またその解釈、一歩間違えば大損害を被る中で、先方がどの見地から対象を見ているのかを知ることがいかに大切かを日々痛感しています。

 なぜアラビア語を勉強するのか。すぐに答えが出せる方もいれば、私がそうであったように卒業間近になっても見つけられない方もいるかも知れません。でも何かの縁でアラビア文字を目の前にしてその世界を学んでいるという機会を、また「言語」という普遍の学問に触れている貴重で贅沢な時間を、是非楽しんでくださいね。これから先さまざまな場面で、きっとその経験は生きるはずです。


(2008年8月記)