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小澤祥子さん(2004年卒業)


*東京大学大学院修士課程に進んだ後、2006年より独立行政法人日本学術振興会研究事業課に勤務


       
  
            ラタキア行き列車にて           ダマスカスの旧市街 
     

■生きたアラビア語にふれてほしい〜留学のススメ〜

 大学でひと通り文法を学んだものの、いまいちアラビア語の勉強に身が入らなくて悩んでいる人がいたら、ぜひ現地に留学してみることをおすすめします。

 

 私は2005年10月から翌年の3月まで、シリアはダマスカスに留学しましたが、その時に日常で話されているアラビア語の豊かさを知ったことが、細々ながらも現在までこの言語を学びつづけているきっかけとなりました。新聞記事や論文を読むのにつかれたら、ぜひ、毎日アラブ人たちが交わしているあったかい挨拶や、市場でのおばちゃんと八百屋の真剣値引勝負などのいきいきとした部分にふれて、アラビア語のあらたな魅力を知ってほしい。そう思うのです。

 

 さて、もちろん外大生でなくても留学はできるわけですが、交流協定制度や豊富な留学情報、また中東各地に散らばる同窓生人脈は、留学生活を何倍も円滑かつ豊かにしてくれる頼もしい存在です。

 

自分のケースを振り返っても、渡航前に留学生活のイロハや現地での知り合いを教えてくれた先輩方、滞在中に住居から学校の手続きまで、あらゆる局面で手をかしてくれた同級生や在学生の後輩たち、これらの同窓生なくしては、半年間にあれだけ充実した時間を送ることはできませんでした。“最先端の研究設備”のように見てすぐわかるものではないですが、創設以来築かれてきた人のネットワークや情報の蓄積は、アラビア語専攻のほこるべき財産だと思います。

 

■現在の仕事

現在私は、日本学術振興会というところで働いています。私のいる研究事業課では、研究資金の助成事業の審査(どの研究グループに助成するか)や評価(採択されたグループの研究の進み具合はどうか)を行っています。残念ながら職場でアラビア語を使う機会はありませんが、これまで縁のなかった理系分野を含め、いまの学問の全体図を見渡すことができるたいへん興味深い仕事です。

 

最近、アラブ世界や中東に関係する研究プロジェクトやシンポジウムを目にする機会が多く、とてもうれしいです。中東に対する関心の高まり、これは学術の世界だけではなく、文化や経済など様々な分野に共通する傾向だと思うので、中東やアラビア語にかかわる仕事がしたい!という人は、「そんな仕事、なかなかないよ」と水さす周囲の声に負けず、粘り強く夢を追求してください。心から応援しています。

 

私も近い将来、中東との学術交流にかかわる機会を得られることを願いつつ、その時のために、日々アラビア語の鍛錬を忘れないようにしたいと思います。